「はい、カーット!!」

「……」

「良かったぞ、ナルト。やっぱり流石だね、お前は」

「バアちゃん、そんな褒め言葉いらねぇよ。それよりあれ頂戴(*´∇`*)」

「ハイハイ…ったく、それにしても…お前逞しくなったな」

「はぁ?!オレ元々強いし!」

「…いや、そういう意味じゃない。というか自分で強いとか言っちゃってるし(; ̄□ ̄)」

「なんだよ?(-"-)」

「いや、そんなもん背中にぶら下げてよく平気だな…と思ってな。昔ならお前蹴り飛ばしてただろ?」

「ああ、これ?もう慣れた…」

 

背中にぶら下げているもの…それはさっきまでナルトが演じていた伝説の人物。

キャピキャピと笑顔で絡みつくそれにはナルトでさえも歯が立たない。

何故なら…それは既に死んでいるのだから。

 

 

 

 

* 娯楽 - ENTERTAINMENT -

 

 

 

 

「ナ〜ルく〜んvvすご〜く僕にソックリだねぇ☆やっぱ親子だよねぇ〜ウフフ♪♪(*´▽`*)ノ」

 

只今、ナルくんは親子で映画鑑賞中。

題名は<四代目火影VS九尾>、つまり四代目が九尾をナルトに封じ込めるまでの経緯なんたらを

映画化したわけだ。

監督は五代目火影である綱手、ナルトの相手役−つまりナルトの母親役は以前雪の国で

世話をした雪姫を起用した。

注連縄も雪姫を大層気に入ったらしく、映画中ずっと雪ちゃん可愛いねぇ〜

ナルくんのお嫁さんにいいんじゃないの〜っていうか、ナルくんの新しいお母さんにどう?

なんて下らない事を言っている。

どうせ、母さん以外見えないくせに。

内容は……

今まで語られなかった否、語ってはならなかった真実の歴史…

四代目の話を基に作られた真実の物語。

所詮映画だ、作り物だと信じない人間がほとんどだろう、逆に昔の惨事を思い出しオレを襲うかもしれない。

ナルトはそう思っていた。

最近はめっきりなくなった暴力暴言…それを恐れる訳ではないが、なんとなくナルトは不安だった。

己が傷つくのを見て悲しむ人がいるから。

それでも映画に出演する事を決めたのは、ホントはあんな巻物を手に入れるためじゃない、

それが…大好きなみんなの願いだったから。

 

全員の心の中は一つだった。

--ナルトに幸せになって欲しい。

そして、万が一里が思わぬ方向に動けば、

--自分たちが里を潰そう。

全てはナルトの為に、ナルトの幸せの為に。

 

 

 

 

 

 

 

映画の公開初日がやってきた。

初日という事もあって、今日は舞台挨拶もある。

映画の中の衣装を身に纏い、舞台上に現れたナルトの姿に会場中が驚きの声に包まれた。

四代目火影が生き返ったのではないかと疑うほど、ただの変化だろうと思うほど、

まるで生き写しだった。

二言三言ナルトと雪姫が挨拶を終えると、映画がはじまる。

最初はなんてことない日常風景。

仲睦まじい夫婦の姿に里人は柔らかい笑みを浮かべる。

 

「ねぇ、まだ産まれないの?」

「まだよ。もぅ、アナタったらいつもそればっかりなんだから」

「だって早く会いたいじゃない、僕らの息子にvv」

「あら、なんで息子だと思うのかしらねぇ〜女の子かもしれないわよね」

「そんなことないよね!絶対に男の子だよね!!」

 

大きくなったお腹に向かって言い争う二人の姿は本当に幸せそうで…

この先に起こる悲劇を知る里人たちはどこか悲痛な思いでいっぱいだった。

それから数日が経ち…

 

「ねぇ、もうすぐ産まれるかなぁ?」

「そうねぇ、あとちょっとかしらね(⌒-⌒)」

「楽しみだなぁ〜早く出ておいでvv」

「だめよ、早く出ちゃったら大変な事になっちゃうんだから!」

「…いや、そういう意味で言ったんじゃ…( ̄Д ̄;;)」

 

その日の夜。

 

「ねぇ、何で男の子がいいの?」

「ん〜だって、女の子だとお嫁に行っちゃったら寂しいし、くの一になったら怪我しないか心配だし…

僕とキミの子供だから絶対可愛いでしょ?そしたら変な男に付け狙われちゃったりとかしてさぁ…ウダウダ…」

「クスクス…ホントの理由はそうじゃないでしょ?」

「え?」

「一緒に山や野原や川や海や…時には戦場だったり、この子と一緒に駆け抜けてみたいんでしょ?」

「…え…」

「女の子がダメな訳じゃないけど、やっぱり男同士の方がいいもんね」

「……う〜ん…そうかもねぇ。正直どちらでもいいんだけど、でもね…なんとなく…

この子は男の子な気がするんだ」

「そ(^-^)」

「うん、そうなの(^-^)そんでもってねぇ、未来は」

「火影になるんでしょ?」

「そう!僕の跡を継いで里を統べる長になるの。なんかね…この子からとても強い力を感じるんだ」

「そうね、私もそれは感じてる。きっとすごい子になるわね」

「そりゃそうでしょ!!だって僕とキミの子供なんだもんw」

「そうねw」

 

クスクス…夜の闇の中で楽しげな笑いが響く。

そして運命の日はやってくる。