「やっぱりナルトの奴来ないわね…」

 

サクラは今日何度目かの溜息を漏らす。

 

「いいじゃないの。ナルトなんて放っといて行きましょうよ、サクラ〜パパたちも待ってるし」

「でも…」

「ったく、しょうがねぇな…俺が見てきてやるから、お前ら親父や先生たちと一緒に先に行ってろ」

 

シカマルは自分の必要な用件だけ伝えると、クルリと踵を返した。

 

「頼んだわよ、シカマル!」

 

 

 

 

//CHERRY TREE 02//No66000

 

 

 

 

「おい、ナルト〜居るんだろ?ったく…出て来やがれ!忍者がお化け怖くてやってられるかよ?」

 

お〜い、と声を掛けつつ扉を叩いても中からは何の反応もなく、

シカマルはどこぞの上忍よろしく窓から覗き見る。

が、部屋には人っ子一人見当たらない…

注意深く気配を探ってみるが、どこかに隠れている訳でもないようだ。

 

「イルカ先生のところにでも逃げた?」

 

と、イルカの家にも行ってみたが、

 

「ナルトなら来てないぞ?」

 

と言われた。

その後、イルカも保護者としてナルトが心配なのか、探すのを手伝ってくれると言うので

一緒に里中を隈なく探し回ったが、どこにもナルトは居なかった。

 

「もしかしたらすれ違いでサクラたちと合流してるんじゃないか?」

「すれ違い…」

 

気配がどこにも見当たらないという異常な状況に不信感を持ちつつも、

シカマルは解決策もなく、イルカの意見に従いサクラたちを追うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結界張っときゃ、どうにかなるか…ま、見られても問題ねぇだろ?」

 

真黒な着物に袖を通しながら、さもどうでも良さそうにナルトは呟く。

 

年に一度、真冬に咲く桜の樹の下で舞う舞は決して華やかなものではなく、

寧ろとても神聖なる儀式だ。

そしてその樹の下で酌み交わされる酒は餞の酒。

里の中で僅かに真のナルトを知る者たちだけを集めて催される極めて重要な夜宴。

全てが里の上層部しか知りえない最高機密である。

しかし極稀にこの光景を目にしてしまう不運な輩が居る。

が、その里人はこの世のモノとは思えない神々しさに恐れ戦き、そして口々に語るのだ…

 

--狂乱の桜の下にはこの世の者ではない者たちが集う--

 

と。

 

十四個の勾玉がついた首飾りを首に掛けると、ナルトは集まった人々の中心に立つ。

 

「ナルくん、今日で十五回目だね…」

「そうだね、父さん」

「ごめんね…」

「それも十五回目だね」

「うん、そうだね」

 

複雑な笑みを浮かべる四代目に向けナルトはニコリと微笑む。

 

「さて、ナルトよ…始めようかの?」

「そんなにせかすんじゃないよ、ホムラ…まったく、年に一度しか会えないんだ。もっと気を使いな」

「そうも言ってられないだろ、コハル婆よ。早くしないと桜が暴走を始めちまう」

「無粋じゃの…綱手姫」

「ふん、なんとでもお言い」

 

フンと鼻を鳴らす綱手に、問題ない。と伝えると、ナルトは右手を真っ直ぐ桜に向かって伸ばす。

同時にシャランと音を立てて鈴が鳴り、舞が始まる。

手足につけられた銀色の鈴がシャンシャンと音を立て、

その音に惹かれる様に桜の花弁が散り始め、ナルトの周囲をフワリフワリと舞う。

 

「何度見ても美しいものじゃのぉ」

「そうだな…ナルトはまるで神の御遣いのようだ…」

「お主の舞いもさぞかし美しかったじゃろうて」

「そうじゃ、そう言えば元はお主が舞っておったんじゃのぉ」

「私などナルトには及ばぬよ」

 

散り逝く花弁たちへの餞に酒を傾ける三代目と九尾、自来也は

ナルトの舞とうまい酒に酔いしれる。

否、その場に居た者全てが酔いしれていた。

 

 

 

 

次で最後になります。

徐々に微妙な方向に流れて行っている気が…

もう少しお付き合いください。