明日は下忍の任務も暗部の任務も休みだ。 明日は俺の産まれた日…そして凱亜がオレの中に封印された日。 忌まわしき慰霊祭が行われる…
閑 * 注連縄 - SHIMENAWA -
暗部の任務を終え、いつものように報告書を出し、いつものように帰って来た深夜1時。 家に在る筈のない気配を感じ、オレは立ち止まる。 10月10日前後はオレを逆恨みしたバカな里人どもがオレを襲いに来る。 しかしそれはあくまで下忍のナルトが住む家の方であって、禁忌の森の家には来る筈がない。 …来れる筈がないという方が正確だが。 それに家の周りには結界を張って、誰にも見えない様になっている。 ちなみにシカマルたちはそれぞれ別任務で朝まで帰れない。 オレは警戒しつつ、気配を完全に消して家の扉を開けて…閉めた。
--オレ疲れてんのかなぁ…
そう思って家を見上げるが、家中に灯った電灯に否応にも家に誰かがいることを思い知らされる。 恐る恐るもう一度扉を開けてみる。 目の前には自分と同じ金色の髪を揺らし、いい年をしてフリルのエプロンを纏った男。 目にはうるうると涙が溜まっている。
「ナ…」 「な?」 「ナルくぅ〜んvvvお誕生日おめでと〜〜〜〜!!」 「……」
突然抱きついてきた男の顔には見覚えがあった…否、里の人間なら誰でも知っているだろう。 その男の名は…波風ミナト−四代目火影、その人である。
「何でアンタがここに居るんだ…てか死んだだろ…」 「ナルくん、めっ。パパに“アンタ”なんて言っちゃダメでしょ?それにパパは死んでません!閉じ込められてるだけ!!」 「ふ〜ん。ま、自分が死んだ事に気付かない奴は皆死んでないって言うしな…」 「何その興味なさげな返事、全く信じてない素振り!パパはこんな子に育てた覚えはありません!!(`へ´)プリプリ」 「育てられた覚えもないけど?」 「ぐす…酷いょナルくん…せっかく久しぶりに会えたのに…」
大人にもなって、というか死んでまで子供の様に拗ねて部屋の隅で泣いている男に 呆れたナルトは眠いのも相俟って、素通りして寝室に行こうとする。 ミナトは慌ててガシッとしがみ付き、潤目で訴える。
「やっぱりナルくん、九尾を封印した事恨んでるんだね!!」 「恨んでねぇよ。凱亜はオレの友達だし、凱亜のお陰でチャクラ使い放題だし、それは寧ろ感謝してるぐらいだ」 「じゃぁ、何で怒ってるの??」 「…オレを独りにして死んだくせに、今更父親の振りしてこんなところに出てくるのが気に喰わない」 「…ナルくん…ごめんね…ごめんねナルくん…まさか死んじゃうとは思わなくてさぁ…」 「ったく、アンタ最高の阿呆だ…もういいよ。っつーか何でここに居るんだょ?」 「うん。今日ナルくんの誕生日でしょ?毎回毎回お願いしてたんだけど、やっと許可が下りたんだぁ☆ まぁ、こうやって実体化するのには結構チャクラ使うから、一回使うと回復するまでは霊体でいなきゃいけないんだけどね〜」 「霊体?」 「出てもいいって許可は貰ったんだけどねぇ〜人質?に本体は置いてけってさぁ〜けちだよねぇヽ(`△´)/」 「(; ̄□ ̄)いや…つーか普通簡単に出てこれるもんなのか?!それだけでもおかしいだろ…」 「そんなことないよぉ(>o<")ナルくんの為に一生懸命お願いしたんだからこのくらい当たり前!! まぁちょっとやり過ぎて、ヒビ入っちゃったけど(*´∇`*)テヘへ」 「ヒビ…」 「大丈夫☆初代と二代目が修復してくれてるからぁ☆ナルくんは心配しなくていいんだよぉ(o^∇^o)」
--恐るべし…四代目火影…
自分もしっかりその要素を受継いでいる事も忘れ、ナルトは父親を恐ろしいものに認定した。 そしてここに誰かいたら必ず突っ込んだだろうが、ここは親子。 恐れつつもナルトはミナトの話に納得したらしい。
「にしてもちょっと見ない間に大きくなったねぇ〜僕によく似てるvv」 「ちょっとって…そりゃアンタが最後に見た赤ん坊からはどう見たって大きくなるだろ…」
悪態をつきつつもナルトの頬は赤く染まっていた。 自分が今ギューッと抱き締めてもらっているのは、正真正銘自分の父親なのだから。 暫しの抱擁の後、ミナトが何かに気付いたようにナルトをじーっと見る。
「…こんな遅くに家に帰ってくるなんて、なんて不良さんなの!って思ったけど…ナルくんもしかして暗部なの?」 「そうだけど?」 「いけません!!こんな子供が暗部なんて!」 「うちはイタチだって五歳で暗部だったじゃねぇか」 「ナルくんはダメなの!即刻辞めさせなきゃ!!今の火影は誰なの?!全くぅ(`へ´) ちょっと連れて行きなさい!」 「いやいやいや…アンタ見たらじいちゃん死んじゃうから…マジで( ̄Д ̄;;)」 「じいちゃん?」 「アンタも知ってるだろ?三代目火影」 「そうかぁ〜三代目が…」
ミナトが感傷に浸っている隙にナルトはちゃっちゃと腕をすり抜け寝室へ向かおうとする。 そして、通りがかりに見かけたキッチンに唖然とする。 まるで何かが爆発した様に至る所真黒な煤がへばり付いている。
「いやぁ、ごめんねぇ〜誕生日ケーキ焼こうと思ったらなんか爆発しちゃってぇ〜えへへ」 「…」
これからこんな日が続くのか…と不安を抱きつつも、ナルトは嬉しそうな微笑を浮かべる。
「ったくぅ…しょうがねぇなあ。オレ寝るから、それまでに直しとけよ」 「えぇ〜一緒に掃除してくれないの〜?」 「オレ任務で疲れてるもん。寝かして、父さん」 「ナルくんが僕のこと“父さん”って…できれば“パパ”の方がいいけど、この際同じ意味なら何でもいいや(=´▽`=) あぁ、この幸せ誰に報告しよう〜とりあえず三代目に!!」 「待て。だからじいちゃん死んじゃうし…てか掃除でしょ、ね?父さん(*´∇`*)」 「“父さん”に任せといてナルくん!!」
極上の笑みは父親にも効果的らしい…既に父親の扱いを覚えたナルトはベッドに潜り込み幸せそうに眠りについた。
「おやすみ、ナルくんvvさて、お掃除お掃除…あっ(;゜〇゜)」
どっかぁぁぁぁん!!
「…ごめん、ナルくん…」 「もう帰れ…」 「酷いよ…ナルくん…( ┰_┰) シクシク…もうしないからぁ〜」 「…バカオヤジ…次やったらもう口聞かないからな」 「ゔ…ナルきゅん…」
どんなに怒っても、最後はやっぱり父親には甘いナルトでした。
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