あれから、満月の夜には必ず夢幻は俺の元に現れた。 どこで知るのか俺が任務の時を除いて… そして現れる度に甘い声で囁くのだ…俺のことが好きだと… 俺も何度も何度も好きだと、愛していると囁いた。 しかし、夢幻は俺の言葉を聞いて悲しそうに笑うのだ。 儚い、今にも消えてしまいそうな程切ない微笑みに、俺は訳も分からずただ一心不乱に夢幻を抱いた。 俺は夢幻なしではもう生きていけないくらい、夢幻に嵌り込んでいた。
弐 * 夢現 - DREAMILY -
今宵も満月の夜… 夜の任務を終えたナルトは静かに寝息をたて始める。 数分後ナルト、否夢幻は目覚めるとカカシの家へ向かう。 黒い着物を身に纏い、漆黒の闇に包まれた里の中を移動する。 気配を完全に消している夢幻に気付く者など一人も存在しなかった。
「夢幻…待ってたよ」
カカシは嬉しそうに腕を夢幻に絡め、口付けた。 それを夢幻も嬉しそうに受け入れ、カカシをベッドへ誘う。 数度の交わりを終え、カカシは夢幻を胸に抱きながら囁く。 今夜のカカシはいつになく饒舌だった。
「俺ね〜夢幻ってもしかして四代目の子供なんじゃないかと思うんだけど、どう?」
「まぁ、先生の目は藍いんだけどねぇ〜でも顔も似てる感じするしさ〜 色だけで言ったらナルトはまるっきり先生と同じだけどね〜でもあれは九尾だから、ありえないよね」
「あ、ナルトはうちの班の問題児。凄く馬鹿でさぁ〜お前才能ないからやめろって何度言いそうになったか」
夢幻は始終無言でカカシの戯言を聞いていた…その言葉を聞いてしまうまで…
「っていうか、ナルトって絶対俺のこと好きだと思うんだよねぇ〜時々凄い熱い視線送ってくれちゃってさ〜 気持ち悪いでしょ…九尾のくせにさ…お前が愛される訳がないでしょ、バーカって感じ? っていうか、あんなのさっさと死んじゃえばいいのに! 先生の代わりにアイツが死ねばよかったんだ…夢幻もそう思うでしょ?」
カカシはそう言って自分の腕の中で何も言わない夢幻の顔を覗き込む。 しかしそこにカカシの望んだ笑顔は無く、夢幻は只管大粒の涙を零していた… カカシは慌てて夢幻の涙を拭う。
「夢幻?!どうしたの?なんでお前が泣くの?!」
夢幻はキッとカカシを睨みつけると、次第に紅い瞳が色彩を変えていく。 ゆっくりと頬に浮き上がる模様にカカシは怯える様に夢幻から離れる。
「嘘…夢幻がナルト…?そんな…」
色彩が完全に変わった瞬間、ナルトの意識が戻る。 目の前には悲壮感が漂う全裸のカカシ…同じ様に自分も全裸である事に気付き、 ナルトは慌てて服を探し、黒い着物が落ちている事に気付く。
「この着物…カカシ先生がオレを嬲ってくれた犯人?」
細々と紡がれた鈴の様な声は正しく夢幻と同じもので… カカシは呆然と自分の口に手を当て、ナルトを見つめた。
「なんで気付かなかったんだ…」
どうやらお互いの話が噛み合ってないらしい… そう判断してナルトは無表情に着物を着る。 そして辺りを見回して、ここが自分の家ではないと認識すると、 おじゃましました。と冷たく言い放って、朝靄の掛かる里へ消えて行った。 取り残されたカカシはボーっとまだ温もりが残るベッドを見詰めていた。 その日、カカシは任務には来なかった。
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