いつからこんな風になってしまったんだろう… カカシを見る度に心臓を鷲掴みされた様な気持ちになる。 あの甘ったるい声に頭がクラクラする… いつもは眠たげな目が、戦闘になった途端殺気を含んで鋭く光る。 あの瞳がオレをおかしくしたのか? 初めてカカシに会った時…オレはアイツの幻術に取り込まれてしまったのかも知れない…
壱 * 夢遊 - SLEEPWALKING -
八年前…俺はナルトと同じ金色の髪を持つ子供と出逢った。 同じなのは金髪だけで、それ以外はナルトなど似ても似つかないけれど… 美しい宝石の様な紅い瞳に俺は一瞬にして取り込まれた。 その大きな瞳に俺を映して欲しくて近付こうとしたが、銀色の暗部に行く手を遮られ、 結局触れる事すら出来なかった子供… 一生逃れられない幻術にでも嵌ってしまったのかと思う程、探しても探しても何の手がかりも得られなかった。 そんな時だった…ナルトの担当上忍になったのは。 一瞬ナルトがあの時の子供かとも思ったが、あの子供はナルトみたいに汚い存在ではない筈だ。 里の守護神に守られているあの子供はとても神聖で、美しいから…ナルトみたいな化物ではないから…
少し冷たくなってきた夜風を肌で感じながら、俺はボーっとあの子供の事を考えていた。 そろそろ寝ようかと部屋に入って俺は息を呑んだ。 目の前に立っているのは俺がさっきまで思っていた子供… 成長はしているが、あの大きな紅い瞳がその子供だという事を確信に変える。
「なんで…ここに?」
口を突いて出たフレーズに俺はそうじゃないでしょ…と苦笑する。 子供は薄い唇を少しだけ開けて美しい微笑を浮かべながら、コテンと首を傾げる。
「来ちゃダメだった?」
俺は子供を抱き締め、必死で首を横に振った。 そんな俺の背中に手を伸ばし抱き締め返すと、良かった…と鈴の様な声で呟く。 その声に俺はまるで暗示を掛けられた様にクラリとする頭を支えながら、ゆっくり子供を押し倒した。 俺は子供の熱に冒され、何度も何度も子供を抱いた。 子供はなんの抵抗もせず、ただ俺の熱を受け入れる。 そんな子供に対して湧き上がる愛情… 相手が子供だということなど忘れて、俺はその幸せな時間を堪能した。 早朝…朝日が昇るから…と子供は薄暗闇に消えた。 夢幻…という名前を残して。
「夢幻…名前の通りホントに幻みたいだな…」
目覚ましの音に目を覚ましたオレは、体中に走った痛みに再びベッドに突っ伏した。 しかも昨日は確かに早く寝た筈なのに、強力な眠気がオレを襲う。
「なんなんだよ…これ」
もう一度身体を起こそうとして、自分がパジャマではなく黒い着物を纏っている事に気付く。 寝る前、確かにパジャマを着た筈だ…愛用のキャップも付けて… そのパジャマとキャップは床にキレイに畳んで置いてあった。 オレは混乱する頭をどうにか冷やそうと、痛む身体を無理矢理起こし、 服を着替える為に着物に手を掛けた瞬間、自分の身体に散らばる紅い花弁に目を見開く。
「嘘だろ…誰がこんな…」
忍という職業上、里外任務等で女が抱けないことが多く、同性同士でこういうことをする事もあるらしい… その為男色家も多々存在すると聞いたことがある。 結局オレの頭はオレを恨む男色家の新手の嫌がらせだということで納得した。 納得はしたが任務には行く気にはなれなかったので…もっともこの身体では任務など到底無理だが… 影分身を行かせると、静かに眠りに就いた。
|