大量の野菜の入った買い物袋を抱え、カカシはうきうきとナルトの家に向かった。

 

--またきっと嫌な顔するんだろうなぁ…でもそこを俺が野菜も食べないとダメだよって怒るんだ☆

なんかちょっとお父さんみたい?

でもダメダメ。俺はお父さんじゃなくてナルトの恋人になりたいんだから…

 

 

 

 

 

* 無知 - IGNORANCE -

 

 

 

 

 

いつものように窓から侵入し、履物を丁寧に窓枠に揃える。

ナルトは連日の任務疲れで寝ているようだ。

 

「ナルトも大変だねぇ〜暗部と下忍の両方をこなしてるんだもん。まぁ、それは俺も一緒だけど…

でもこれからは俺がナルトの為に栄養のある美味しいご飯作って、ナルトの健康を守るからね!」

 

カカシは静かにキッチンへ向かい、野菜を冷蔵庫に入れようとして、手を止める。

 

「え…嘘…なんで野菜が入ってるの?ナルト野菜嫌いな筈なのに…

しかも調理した跡まである…もしかしてイルカ先生かなぁ?」

 

そう思いながらキッチンを見回すと明らかに使われたまま放置された包丁とまな板、

少しだけ残っている野菜炒めがあった。

 

「野菜炒め?あのナルトがこんな野菜野菜した物食べるの?

それにイルカ先生ならなんで片付けてないんだろ…」

「それはオレが作って食べた後に、眠くなって寝たからだ」

「え…ナルト?」

「なんだよ?」

「ナルト野菜嫌いじゃないの?」

「それは下忍のナルトの話だろ?確かにラーメンは好きだけど、野菜はそれよりも好きだ。

ま、九尾ノ影響もあるけどな」

「嘘…」

「そんなことで嘘ついてどうするんだよ…」

「ねぇナルト、他にも下忍の時と違うことってあるの?」

「違うことねぇ…殆どじゃねぇの?大体あの人格は里人を誤魔化す為に作り上げたものだし」

「全部教えて!!」

「は?!」

「ナルトのこと全部知りたいから…何が違うのか教えて!!」

「なに訳わかんねぇこと言ってんだよ…」

「例えば、語尾に<てば>って付けないよね?てことはそれも作り物?」

「うん。使わないな…」

「身長とか、年齢とかは誤魔化してないよね?」

「別に年齢とかは誤魔化してない。あ〜だけど、身長かぁ…それはわかんねぇな」

「なんで?!どういうこと??」

「オレ、九尾の影響かどうかわかんねぇけど背は伸びるの早いから」

「てことは、今のは変化?」

「まぁ、そんなようなもの。このリングに変化の術を仕込んであるんだよ…ここんとこ取ってねぇからどうなってっかなぁ?」

「取ってみてくれない?」

「別にいいけど…」

 

ナルトが首から下げていたリングを外すと、真っ黒な着物を纏った170cmくらいの少年が現れる。

その顔は驚くほど己の師匠に似ていて、カカシは思わず口に出してしまう。

 

「先生…」

「?…そんなに四代目に似てる?」

「え…ナルト、俺の師匠が四代目だって知ってるの?」

「知ってるけど?」

「なんで?やっぱり暗部だから?」

「ん〜それもあるけど…父さんの話は耳にタコが出来るほど聞いてるからなぁ」

「へ?…ナルト今父さんって言わなかった?!」

「言ったけど?」

「ナルトって四代目の息子なの?!」

「さっきから驚きすぎ…」

「で、どうなの?」

「そうだよ。オレはれっきとした四代目の息子」

「マジで…ねぇ他にも隠してることいっぱいあるでしょ」

「う〜ん…いろいろありすぎて説明するの面倒だから、ちょっと出掛けようか?」

「へ?」

 

ナルトはリングを付け直すと気怠そうに印を組む…と言っても恐ろしいほど早いのだが。

 

「解!」

 

ナルトの部屋が今まで見ていた様子と一変した。

さっぱりと家具が殆どないのは変わりないが、

さっきまで見えていたゲームやゴミなどが全て書物や武器に変わっていた。

本棚にあった簡単な参考書には全て赤文字で禁と記してあり、武器もかなり手入れされたものばかりだった。

 

「なにコレ…」

「軽い幻術みたいなもの。気付かないなんて、やっぱ腕鈍ったんじゃない?

まぁ、写輪眼発動してないからしょうがないか…」

 

ナルトは今まで見えていなかった扉を開ける。

その扉の向こうにカカシは今日何度目か分からない驚きの声を上げる。

 

「え…ウソォ…」

「オレのホントの家」

 

そう言って連れてこられた場所は、巨大な屋敷だった。

その屋敷からこちらへ向かって走ってくる動物に、ナルトは絶品の笑顔を向ける。

 

「お〜凱亜、出迎えか」

「おう。お帰りナルト」

「ただいま」

 

九つの尾を揺らして小さな狐がナルトに飛びついた。その狐を見てカカシは絶句する。

 

「九尾…?!」

「そう」

「封印解けたの?」

「いんや、口寄せ」

「…ダメだ…もう突っ込む気力がない」

 

だが衝撃はカカシの回復を待ってはくれなかった。

 

「ナ〜ルくんvvお帰り〜」

「ただいま、父さん」

「…」

「?あれぇ〜もしかしてカカシくん?大きくなったねぇ?ってなんか白くなって固まってる…お〜いカカシく〜ん」

「ハァ…(-。−;)ほっといたらその内復活するんじゃない?」

「そうだねぇ〜」

 

ナルトたちはカカシを置いて屋敷に入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

ナルトの家にやってきたシカマル、チョウジ、いのは口々に質問を投げかける。

 

「…ナルト、なんだあれ」

「ああ、ちょっとショック受けたみたい」

「なんか置物みたいだねぇ〜ま、あんな置物要らないけど…食べれないし」

「そもそも置物自体食う物じゃねぇだろ…」

「ま、誰でもこの家の状況見たらああなるわよ…なんてったって、

死んだ筈の四代目と封印された筈の九尾が仲良く同じ家で暮らしてるんだから…」

『確かに…』

「裏木葉なんて行った日にゃ、多分昇天するな…」

「そうだね…死んだ筈の人ごろごろ居るわ、里抜けた筈の人も居るわ…なんでもありだもんねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くして目覚めたカカシは、シカマルたちが暗部だったことも含めて再び驚き、

次の復活までに半日を費やす事となる。 

 

「一体どうなってるの…?(ノ_-;)」