その頃、三代目の元には多くの里人や忍が集まっていた。

そして三代目の傍に居る者たちの冷たい、自分を蔑む様な視線に人々は怯えた。

自分たちがナルトに同じモノを向けていた事を忘れて。

 

『三代目!九尾の封印を!!』

『私たちを助けてください!』

『再びあの化け狐が里を襲っています!里を守って下さい、火影様!!』

『封印を!!』

 

 

「ほぅ…そこまで言うのなら、お主が今抱いている赤子を渡せ

 

 

『…?!』

 

 

「そこのお前、間もなく産まれる子がおるじゃろう?腹を裂いて差し出せ

 

 

「なっ…」

『三代目?!なんと言う事を仰るのですか!!』

「四代目は里を守る為に、産まれたばかりの我が子を差し出した。封印を迫るならまず子を差し出す事が先じゃろう?」

『四代目の子…?そん…な…俺たちは…』

「四代目がどんな気持ちかお主らに判るか?

我が子を器として差し出し、英雄と呼ばれるようにと願って死んで行った父親の気持ちが判るか?」

『…う…嘘だ!!そんなこと…あれは狐だ!…狐なんだ!!』

「お主らにはほとほと愛想が尽きたわ。もうこの様な里など必要あるまいて」

『火影…様…我らは…』

「死して悔いるが良い…」

 

 

 

 

 

 

* 木葉崩壊3 - COLLAPSE3 -

 

 

 

 

 

 

--ナルト!

 

--…なに…?

 

--ナルト!!

 

--オレを呼ぶのは誰…?

 

 

「ナルト!!」

 

薄っすら目を開けると、目の前には良く知っている笑顔。

 

「やっと起きた。おはよ、ナ〜ルト」

「カカシ…なんで…死んで…ないのか?」

「ちゃんと生きてるよ」

 

そう言ってゆっくりと顔を近づける。唇から伝わる暖かさは生きている証拠。

惜しむように唇を離し、カカシは無理矢理笑みを作る。

 

「ナルトなかなか起きないから心配しちゃった」

「カカシ…」

「…ねぇナルト、目を覚ましてよ」

「え…オレ起きて…?!…ここは…カカシ!何でこんなところに居る!!」

「ナルトを起こしに来たの」

「でも、オレもう生きる場所が…」

「だ〜か〜ら〜、俺生きてるでしょ?つまり、み〜んな生きてるの!わかった?」

「生き…てるの?」

「当たり前でしょ?俺たちがそんな簡単に里のへな猪口野郎どもにやられると思う?」

「…そういえば…そうだよな」

「だから起きて?みんなお前を待ってる」

「ん…でももうちょっとだけ…」

「??」

「もうちょっとだけオレと一緒に居てよ、カカシ」

 

ナルトはゆっくりとカカシを見上げる。

その視線に吸い込まれる様に、再びナルトに口付ける。

 

「偶にはこうやって二人きりもいいかもね…」

「だろ?」

「ナ〜ルト」

「ん?」

「好きだよ」

「オレもカカシが好き」

「ねぇ、ナルト」

「何?」

「しよ」

「調子に乗るなバカ///…ちなみに凱亜に全部丸聞こえだから」

「え…///」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三代目!ナルトとカカシ先生が!!」

「どうした?!」

「ただいま?じいちゃん…」

「ナルト…ナルト…良かった…本当に良かった…」

「じいちゃん…オレ…」

「良い、もう何も言うな…カカシも…ありがとう…」

「いえ…」

「そんなことより凱亜…止めなきゃね」

「その必要はない…このまま里は滅ぼそう」

「じいちゃん?!」

「確かに、こんな里もう必要ないわね…」

『?!』

 

その場に突如降って来た聞き覚えのない声に一部を除き全員が振り返る。

そこに立っていた者を見て、皆が息を呑んだ。

 

「大蛇丸か…」

「遅かったのぉ」

「お久しぶりね、先生、自来也。これでも早く来れた方よ…突然だったんですもの…」

「では行くとするかの」

「さ、ナルトくん…迎えに来たわよ」

「え?…じいちゃん…?」

『三代目…これは一体…』

「音隠れの里を大蛇丸に作らせたのは儂じゃ」

『?!』

「いつかこんな日が来ると思ってな…ナルトが己を愛する者たちと共に暮らせる里を作らせたのじゃよ」

「オレの為に…?」

「そうじゃ、だからこの里はもう必要ない」

「…じいちゃんオレの為に…ありがと…それとごめんね…」

「何を謝る。さぁ、行こうかナルト」

「うん。その前に凱亜連れてくる」

 

そう言って飛び出して行った姿は正しく暗部。

腰には白い狐の面、耳には金色の珠を揺らし、纏った衣装はこの里の忍の頂点を示す暗部総隊長の着衣。

 

「白狐…」

「四神の、そして暗部の長…」

「私たちは…あの子供に守られていたというのか…」

 

嘆く里人たちを嘲笑うかの様に、今まで里を破壊し続けていた九尾は一瞬にして消えた。