中忍試験の真っ只中。

たった今シカマルは砂のテマリとの対戦でギブアップした。

ネジは先のナルトとの心理戦の為休養を取っている。

ナルトはシノと二人でシカマルの試合を見学しつつ、周囲の様子を伺っていた。

 

「オレちょっと説教してくるってば!(ついでに真ん中から様子見てくる!)」

「あ、おいナルト…」

 

シノの言葉も聞かず、ナルトはシカマルの元へ下りていった。

 

「バカ!(これでお前は中忍決定だな(笑))」

「うるせー超バカ!!(マジかよ…途中で棄権してもダメなのか)」

「なんで棄権したんだよ!(関係ねぇだろ…あんな計算立てた試合するからだ、バ〜カ)」

「もういいだろ…そんなことは(そんなこと言ったってよぉ〜無駄な体力使いたくねぇし…

どうせこの後嫌って程消費するんだろ?めんどくせぇ)」

「にしても、サスケの奴何してるってば!次だってぇのにまだ来ねぇ…(ったく、何やってんだカカシ先生…)」

 

その瞬間、場内に木の葉が舞い散る…

その中から現れた人物に、ナルトは小さく微笑んだ。

今正にサスケ対砂の我愛羅の試合が始まる。

 

 

 

 

 

* 我愛羅 - GARRA -

 

 

 

 

 

ナルトとシカマルはサスケの試合をとりあえず観戦する為、ゆっくりと客席への階段を上っていた。

面倒臭いので棄権しようと思っていたところをナルトに問答無用で突き落とされたシカマルの提案だ。

階段を上りきったところで我愛羅の気配を感じ、二人は一時的に気配を消して見守った。

 

「やってくれるねぇ、人ん家の庭で…」

「あれが我愛羅に入ってる砂の守鶴って奴か…」

「いや、あれは違う。あれはただの砂だ」

 

気配を消しているため、小声で話すナルトたちに気付かず我愛羅はナルトたちの横を通り過ぎる。

それを見計らって力を抜いたシカマルは大きく息を吐いた。

 

「つーかよぉ、いくら九尾には劣るっつってもサスケとあれ戦わせていいのか?ヤバいんじゃねぇ??」

「一応カカシには伝えてあるから、ギリギリ防げるくらいの術は教えてるんじゃねぇの?…多分」

「…多分…」

「まあなんかあればオレたちが助ければいいだろ?奴に死なれちゃ困るからな…」

「そうだな…めんどくせぇ…」

「にしても砂の我愛羅か…やり難いな…それに憑依体になられたらオレは動けなくなる…」

「?」

「やっぱ止めとくか…」

「ナルト?!」

 

急に消えたナルトの気配を追って、シカマルもその場から煙のように消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カカシ先生!今すぐ試合をやめさせるってばよ!!(不味いな…憑依が始まってる…)」

 

ナルトの目の前に広がる光景にチッと舌打ちする。

 

「ナルト?!(どういうこと…?!)」

「このままじゃ、サスケ死んじまうぞ!(ああなった我愛羅を止められるのはもうオレしかいねぇ…)」

 

と、突然会場中に真白な羽が舞い落ちる…

ナルトは面倒臭そうに溜息を吐くと、瞬時に影分身を作り眠らせ、

自分自身は素早く暗部姿に変化する。

シカマルとシノも同じ様に影分身を作り、変化して白狐の元に跪く。

ナルトは風影に捕らわれている三代目のほうに行こうとするが、それを三代目は一蹴した。

 

--お前は我愛羅の方へ行け。あれはお前にしか止められん!

--だけど!!

--儂は大丈夫じゃ、心配するでない。

--クソ…わかった。オレが行くまで死ぬんじゃねぇぞ!!

--ああ、わかっておるよ。

 

三代目はニッコリと微笑み、風影と共に闘技場を去った。

ナルトは小さく舌打ちすると朱寂たちに向き直り指示をする。

 

「朱寂、お前は三代目の方に行け!

源武は青瀧と共に里の守りに!回復も怠るな!!」

『了解!』

「白狐、お前は…」

「オレは我愛羅を止める。尾獣は尾獣にしか止められねぇ…朱寂!じいちゃんを頼む」

「わかった」

 

命令を聞いた朱寂たちが消えたのを見届け、ナルトはカカシの隣に立つ。

突然現れた暗部たちに次々と指示し、更には周辺に居た敵を一瞬で一掃した狐面にガイは目を見開いた。

が、カカシはそれに驚くことなく目を向ける。

 

「カカシ、オレはサスケと我愛羅を追う。今起きて話を聞いてるシカマル借りるぞ。

あと犬一匹貸してくれ」

「いいけど…なんでシカマルまで連れて行くの?」

「こいつの頭は使える。ただそれだけだ」

「りょ〜かい(何も聞くなって事ね…)」

 

カカシは諦めたように小さく息を吐き、忍犬パックンを口寄せし、サスケを追うように指示した。

白狐が寝たふりをしているシカマル(影分身)を叩き起こし、その場を後にしようとした時

腕を掴む少女が一人…

 

「私も連れて行ってください!」

「お前…」

「サクラ、お前が行ってもどうにもならない」

「それでも…それでも私にも何か出来る事があるかもしれない!!」

「サクラ!!」

「カカシ、もういい。いいだろう…但し足手まといになるようならすぐに捨てて行くぞ!」

「はい!!」

 

桃色の少女を連れて、白狐は改めてサスケを追うために森の中へ消えた。

その一連の様子にガイは瞠目して、カカシに尋ねる。

 

「一体あの暗部はなんなんだ…お前、知り合いなのか?!」

「この里の守護神…暗部総隊長様だよ」

「総隊長?!じゃあ、あれが噂の白狐か…」

「さてと…ここらの敵は白狐がやっつけてくれたし、俺たちも里の援護に回るぞ」

「あ、ああ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いたぞ!(もう半分近く守鶴に取り込まれてやがる…)」

「サスケくん!!」

「サクラ、飛び出すんじゃねぇ!(やっぱり連れて来るんじゃなかったか…)」

 

サクラは砂に捕まり、意識を失った。

白狐は小さく舌打ちし、サスケ、サクラ、シカマル、パックンの周囲を結界で覆う。

 

「そっから出るんじゃねぇぞ、お前ら!シカマル、どうにもならなかったら逃げろ!」

「わかった…」

「シカマル…?アイツは…一体…」

「バカサスケ、喋るんじゃねぇよ…黙ってアイツの戦いを見ておけ」

「クソ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の仲間をよくもこんな目に合わせてくれたな…」

「仲間?!だと…お前は…」

「さあな…どうでしょう?」

「フン…面白い…それでこそ殺しがいがあるというものだ!」

「お前にオレは殺れねぇ…未だに孤独のお前と、孤独を乗り越えたオレとではレベルが違うからな」

「孤独を乗り越えた?!何を言っている…」

「オレも化け物だから…それに守鶴じゃオレには勝てない…」

「俺は負けない…俺の存在意義を奪うなぁぁぁぁぁぁ!!」

 

我愛羅は悲痛な叫びと共に巨大な狸−守鶴の完全体に変化した。

それを見上げながら白狐は哀しそうに目を逸らした。