「シカマル…悪い…やっぱそいつら連れてこの場所から離れろ!」

「…わかった」

「それとこの場から離れたら、余計なチャクラを使うのはよせ。オレは大丈夫だから」

「白狐!」

「こっからはチャクラフルに使うからな…まだこいつらに正体知られる訳にはいかねぇんだ。

だから行け!!」

 

シカマルはサクラとサスケを担ぎ、不安そうな顔のパックンを従えてその場を去った。

それを見届けた白狐は素早く印を組み、変化を解く。

 

「解!」

「やはりな…お前はうずまきナルト…フハハハハ」

 

 

 

 

* 我愛羅2 - GARRA2 -

 

 

 

 

 

我愛羅はさも可笑しそうに笑い続けていた。

 

「何がおかしい…」

「お前も俺と同じだと思ってな」

「どういう意味だ!」

「何が孤独を乗り越えただ…ならば何故そうやって本当の自分を隠している?!」

「そうだな…確かにオレは誰にも本当の自分を悟られないように、少しでも人と関わらないようにしてきた。

だが自分を偽っていたオレでも本当の仲間ができた。オレはそいつらの為にこの里を守る!」

 

忍法 口寄せの術!!

 

「なんじゃぁ、ナルトか〜久しいのう」

「悪いな、ガマ親分。また手ぇ貸してくれ」

「ありゃ、砂の守鶴じゃねぇか…ったくしょうがねぇなぁ…お前らは親子揃って困った奴らだよ…」

「オレ、あれの中にいる奴を助けてやりてぇんだ…頼むわ」

「そいじゃいっちょきっちり仁義見せたるか!!」

 

巨大な生き物たちによる戦いは壮絶を極めた…嵐のように木々は倒れ、大粒の水の雫が降り注ぐ。

正に天地を揺るがす戦いだった。

その戦いに決着をつける為、我愛羅は自分が唯一眠る事の出来る技を発動する。

 

「砂の守鶴の本当の力、見せてやる!」

 

忍法 狸寝入りの術!!

 

「は〜っはっは、やっと出てこられたぜ!!」

「む、守鶴が…あの術はいかん!ナルト、あのガキ起こせ!!」

「分かった…親分は変化して守鶴を抑えてくれ!」

「変化?!」

 

--凱亜ちょっと力貸してくれ!

--ああ、わかっている

 

ナルトが素早く印を組むと、親分の周辺を煙が覆いその姿を変えていく…

 

「こりゃぁ…まさか…九尾か?!」

「うん。じゃあ守鶴頼んだ!」

「わかった!まさか九尾とはなぁ…つくづく面白いやつだ。よし…覚悟しやがれ、守鶴!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナルトは空間移動の術を使い、親分の上から守鶴の頭部に移動し、ゆっくりと我愛羅に近付く。

守鶴に取り憑かれた者はその恐ろしさのあまり、満足に眠る事が出来ないという…

ぐっすりと恐れる事なく眠っている我愛羅を起こすのは少し躊躇われた。

ゆっくり我愛羅の髪に触れ、話しかける。

 

「我愛羅…我愛羅…」

 

--誰だ…俺を呼ぶのは…暖かく優しい声…誰だ…

 

「我愛羅…」

 

うっすらを目を開けた我愛羅は、今まで自分の名前を呼んでいた人物に驚く。

 

「うずまき…ナルト」

「悪いな…眠ってるとこ起こしちまって…だけど、このままやってると里が壊れちまう。

だからお願いだ…もう終わりにしよう、我愛羅」

「うっ…」

「狸寝入りを解除してもまだだめか…」

 

ナルトは頭を抱え苦しむ我愛羅をそっと抱き締める。

その温もりに驚きつつも、気分が安らいでいく自分に我愛羅は不思議そうにナルトを見上げる。

 

「もう終わりにしよう…な、我愛羅。オレがお前を孤独から救ってやる」

「ナルト…」

 

ナルトが優しく微笑み我愛羅をギュッと抱き締めると、我愛羅もゆっくりとナルトの背中に手を回した。

落ち着いたように我愛羅が目を閉じると同時に、守鶴は消滅した。

 

「ナルト…ワシも疲れたけん、帰るけぇのぉ」

「ありがとう、親分。またな」

「次は酒宴にでも呼んでくれ…もう戦闘はこりこりじゃ」

 

すっとガマ親分は姿を消した。

その場に残るはナルトと安心した顔ですやすや眠る我愛羅…そして…

 

「出て来いよ」

「一体お前は何者だ、うずまきナルト」

「教えるじゃん」

「オレの腹には十二年前この里を襲った九尾の妖孤が封印されている」

「なんだと!?」

「それはつまり我愛羅と同じってことじゃん…だから、我愛羅を殺さないでいてくれたのか?」

「大蛇丸に騙されたとはいえ、お前らのやったことを許すつもりはないがな…」

「大蛇丸?!なんのことだ…」

「お前たちの父、風影はもうこの世に居ない。さっきまで居たのは木ノ葉の抜け忍、大蛇丸だ!」

『なんだ…と…父上が…』

「すぐに皆に報告せねば!」

「早くした方がいい。木ノ葉は大いなる楔を失った…その…代償は大きいぞ…」

「お前…泣いてるじゃん?」

 

ナルトの瞳から零れ落ちた雫はポタポタと我愛羅の頬に落ちた。

それに気付いた我愛羅はゆっくりと目を開け、ナルトの頬に手を添える。

 

「ナルト…泣いているのか…」

「う…」

 

我愛羅は起き上がり、今度は自分がナルトを抱き締めてやる。

その胸の中でナルトはひたすら涙を流し続けた…三人の暗部が現れるまで。

 

『ナルト!!』

 

静かに顔を上げたナルトの大きな藍い瞳から流れる雫にそこに居た者皆が目を奪われた。

それほど、その涙は澄んでいて美しかった。

 

「ナルト…三代目が…」

「わかってる…」

『すまない…』

「お前たちが謝ることじゃないだろ?多分、じいちゃんもこうなることは最初から分かってたんだと思う…

だからオレを我愛羅の方に行かせた」

「俺の所為か…」

「違う…お前は…お前ら砂は利用されただけだから。

じいちゃんが死んだのはオレが非力だった所為だ…オレが弱かった所為だ…」

『ナルト…』

 

ナルトを抱き締める我愛羅を目を見開いて見つめていた兄弟たちは、

三代目の死によって砂の里が今どんな立場なのかを即座に理解した。

 

「我愛羅…私たちはここを去らなくてはならないわ」

「ナルトはそいつらに任せて行くじゃん」

「…」

「我愛羅!早く里の者たちにこのことを伝えなければ!!」

「早くするじゃん!」

「俺は…ナルトの側がいい…帰りたくない…」

「ダメよ我愛羅!!アンタは私たちの弟なんですからね!一緒に帰るのよ!!」

「お前をこの里に残して帰れるか!」

「テマリ…カンクロウ…」

「我愛羅、お前にもちゃんとお前のことを心配してくれる人がいるじゃねぇか…

ここにはまた遊びに来ればいい。あんまり姉ちゃんたちに心配かけるんじゃねぇよ」

 

ナルトの言葉に恥ずかしそうにコクリと頷くと我愛羅はカンクロウに背負われ砂へ帰っていった。

その場に残された暗部−青瀧、朱寂、源武は変化を解き、悲痛な面持ちでナルト見て息を呑む。

ナルトはスッキリしたように晴れやかな表情で前方を見つめていた。