愛しき愛しき里の長… 三代目火影の葬儀が厳かに行われる。 元々闇の中に生きる暗部は常日頃喪服を纏っているも同然だ… 漆黒の衣を纏い、老人の死を悼む者たちの前に五人の暗部たちが音も無く姿を現す。 下忍、中忍の身分では近付くことの出来ない至近距離で老人に触れることを許された特権階級。 彼らは里の守護神…四神と呼ばれる者たち。
肆 * 三代目 - SARUTOBI -
先頭に立つ狐面の暗部が跪き、続いて後ろの四人が次々とその姿を真似て跪く。 その様子をそれ以外の人々はただただ眺めていた。 否、人々は暗部の長、白狐にひたすら目を奪われていた。 誰もがその仮面の下に潜む素顔を見たいと心の底から思っていた。 しかし里の最重要機密である彼らにそれは許されない。 だが分かっていても口に出てしまうのは、しょうのないことだ…それほどその忍は美しかったのだから。
「仮面を取ったらどうなんだ…暗部だからと言ってそれは三代目に対して失礼だ」
誰が言ったかもわからない声に、白狐はクツリと笑う。 そして惜しげもなくその面を取る。 他の暗部たちもそれに伴い、少し躊躇いつつも面を取った。 二度と見ることのできない光景…里の最高機密の素顔。 だが、人々はそれを見ることなど当然叶わぬ事。 何故なら彼らは三代目火影だけを一心に見つめ、 先頭に居る白狐に至ってはただただ美しい雫を流し、俯いているのだから。
「三代目火影、我々四神は貴方が死しても尚貴方だけに忠誠を誓います。 貴方が残して下さった火の意思は必ずやこの里に受継がれ、この里を更なる発展へ導くでしょう。 我々は貴方の火の意思を受継ぐ者…その意思を胸にこれからも里を守り続けます。 死神の腹の中での苦しみは想像を絶するものでしょう。 ですがどうか許されるのであれば…どうか貴方に安らかなる眠りを」
泣いている筈の白狐の声はとても透き通っていて淀みないしっかりした声だった。 誰もがその美しい声に酔いしれた。 白狐は静かに立ち上がり、棺に横たわる三代目の元に足を進める。 そっと頬に口付け、誰にも聞えない程小さな声で別れの言葉を呟く。
「今迄ありがとう、じいちゃん…助けてあげられなくてごめん…」
十二歳のうずまきナルトに一時的に戻るが、すぐに仮面を付け直し風の様にその場から消える。 それを見届ける様にして残りの四人も一瞬にしてその場を後にした。 一陣の風が吹く間に過ぎ去った出来事にその場に居た人々は夢でも見たのかと自分の目を疑った。 その後の葬儀での騒ぎは予想の範疇だった。 いつの間に入れ替わったのかナルトは小さく息を吐き、火影岩をじっと見つめていた。 盛大な騒ぎの後この荘厳な葬儀は幕を閉じた。
火影岩 「さてと…これからどうすっかなぁ?このまま里を守るとは言ったがもうじいちゃんはもう居ないし…」 「のぉ、ナルト?」 「自来也か…なんだよ?」
突然掛けられた声に驚きもせずナルトは顔を上げる。
「久しぶりにワシと旅に出てみんか?」 「ただ火影になるのが嫌なだけだろ?」 「む…」 「…旅か…それもいいかもな…少し里から離れたい気分だし」 「決まりじゃな」
ナルトの新しい物語がここから始まる…
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