「じいちゃん、オレが卒業したら…オレの担当上忍はこいつにしてくれ」
ナルトが寄こした書類に素早く目を通す。
「?!…ナルト…こやつだけはダメじゃ」 「なんで?」 「こやつがどんな男かお前はわかっておらんのじゃ。 こやつは冷酷非道、己以外の者には興味を持たない。そして…九尾に強い憎しみを持っている」 「知ってる。全部青瀧に調べさせたから」 「ならば何故じゃ…」
--それはオレが聞きたい…なんでかわからないけど、ただあの夜の事がずっと頭の片隅に残っていた。 月の光を浴びて輝くキレイな銀色をオレは忘れられないでいた。それに…
「こいつにはオレと同じ臭いを感じる…血腥い臭い。なんだかオレと似てる気がするんだ」 「…ナルト…やはり暗部の仕事「そういう意味じゃない!そういう意味じゃないんだ…」 「…わかった。お主がそう言うなら仕方あるまい…」 「ありがとう、じいちゃん。で…お願いついでに…」 「なんじゃ?言うてみぃ」 「監視もそいつに替えて欲しい。…ほら…余計な人手削減できるだろ?…」
三代目は小さく息を吐き、暫く考える仕草をした後、静かに顔を上げた。
「そうじゃな…お主も何か考えがあるのだろう…お主の言う通りにしよう」 「ありがとう」
ナルトは柔らかく微笑んだ。
零 * 担当上忍 - SUPERIOR -
暗部だった俺が突然上忍への降格と下忍の担当教官就任を言い渡された。 俺はこの数年死に物狂いで働いてきた…その俺が呆気なく降格…訳がわからなかった。 近年巷で騒がれている四神がいるから俺は必要ないという事か。 しかし里の人手不足は以前と変わらず、寧ろ悪化したと言っていい。 里の稼ぎ頭である自分を担当教官などに任命するとは、里の長もただの呆けたじじいに成り下がったのか。 腹いせに俺は全ての下忍候補たちに厳しい試練を与えた。 下らない子供ばかりだ…皆自分のことしか考えない、言われた事を守るだけの人形… 当然合格者は毎回ゼロ…だった。 そして運命の時は来た…
あの子供を見た瞬間…俺の心臓は止まるかと思った。 俺の頭には白い粉が降り注ぐ、それを避けることすら出来ない程俺は驚いていた。 金色の子供−うずまきナルト…俺の探す金色に最も近く、そして最も遠い子供。 俺の大事な先生を奪った、そして俺の嫌いなこの里を襲ってくれた狐の器。 俺の心中は複雑だった…最初はどう接したらいいかなんて全くわからなかった。 正直、監視役である事が苦しく思える程に。 この子が里からどんな目に合わされているかも知っていたし、止めようとも思わなかった。 どんなに罵られようと、どんなに傷つこうとも笑っている子供が、時々腹立たしく思えた。 憎しみとかそんなものではなくて…多分自分に重ねていたんだと思う。 どこか俺に似ていると思ったのはいつからだろう…何が似ていると思ったのだろう… 俺とこの子供の違い…それはいつも歴然としているのに。 才能と努力と強い憎悪。 努力をしていないとは言わないが、元々才能のないこの子供は唯一の力の源である憎悪も持たない。 その事は俺の中に常に憐みとして留まり続け…そしていつしかその憐みは自然と俺の保護者としての本能を目覚めさせた。 今俺は子供をどんなものからでも守ってやりたいと強く思う。 それを愛情と呼ぶのかは判らない…ただ守らなければと思った。 それはきっと笑顔の奥に潜んでいるこの子供の暗闇に無意識に気付いていたからかもしれない。
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