今日からオレは波の国に旅立つ。

情報は既に青瀧に調べさせたからバッチリだ。

最近ちょっとウザくなってきたカカシが一緒というのが気に食わないが…担当上忍だからしょうがない。

最初こそいろいろシカたちと悪戯して楽しい思いをしたが、カカシはゴキブリ並みの精神を持っているらしい…

なにをやっても懲りずにへばりついて来るカカシにちょっと疲れてきた…

なんだかとてつもなく気持ち悪い粘っこい視線を感じるし…

まぁ、今回は霧の抜け忍、忍刀七人衆の一人−鬼人桃地再不斬がいるからそれどころじゃないと思うけど。

なんだか嫌な予感がするんだよなぁ…何もなきゃいいけど…

 

 

 

 

* 案山子 - KAKASHI -

 

 

 

 

「ねぇナルト?一緒に寝よ☆」

「は?!」

 

この<はたけカカシ>という男はいつも突拍子もないことを言う。

再不斬との戦いで写輪眼を使い過ぎたカカシは一週間はまともに使えない。

その男の側を偶々通り掛ったのが運の尽きか…

はたまたそのマスクの下を覗いてみようと近付いたのが悪かったのか…オレはいとも簡単にカカシに捕まってしまった。

そして上の言葉である。

下忍の<うずまきナルト>ならば恐らく邪気のない笑顔で喜んでYESと答えるだろう…

こいつはナルトの性格を熟知している…それを旨く利用しているところが腹立たしい…

しかし、オレに逆らう術はなく…

 

「先生、寂しいってば?」

「うん、ナルトが居ないと寂しいの。だから一緒に寝よ☆」

「しょうがないから、一緒に寝てあげるってば(o^∇^o)」

「ありがと(*´∇`*) さ、おいで」

 

正直こういう温もりは嫌いじゃない。オレはこうやって抱いて寝てもらう事なんてなかったから…

いつも真っ白い部屋で一人ぼっちだったから…

 

「イルカ先生と違うにおいだ…」

「イルカ先生と一緒に寝た事あるの?!(なんだと?!イルカ先生め…)」

「あるってばよ?イルカ先生の家にはよくお泊りに行くってば(*´∇`*)」

「そうなの?!じゃぁ、一緒にお風呂入ったりするの?!(ハァハァ…興奮中)」

「す…するってばよ…先生鼻ぢ…」

「あぁ、すまん。興奮してな…こ…今度は先生の家に泊まりにおいで」

「いいってば?」

「いいってばぁ〜(か…可愛すぎる…)」

「せ…センセーだから鼻ぢ…」

 

--やっぱダメだこいつ…にしても挑発するのは楽しいけどヽ(=´▽`=)ノ

 

「そうだってば、先生、おやすみのチューは?」

「え…チュ…チュー?!Σ(; ̄□ ̄) いぃぃ…いいの?」

「…いいってばよ?(どうしよう…オレ笑い死しそう…)」

「…(ドキドキバクバク)」

「センセ…目…瞑ってってばvv」

「う…うぅん(ああ、夢にまで見た時が…任務続行して良かった☆)」

 

 

 

ブチュ

 

 

 

「…何これ…カエルじゃぁぁぁぁぁぁ!!おげぇぇぇぇぇ」

「この人失礼極まりないわ」

 

口寄せでこっそり呼び出しておいたカエルの<ガマ子>さんだ。

カカシは彼女の逆鱗に触れてしまったらしい…強力なバネを駆使したガマ子さんのキックが炸裂した。

動かなくなったカカシの腕からスルリと抜け、オレは自室に戻ろうとする。

 

「やっと開放されたぜ……ってばよ(;゜∇゜)」

「ナ〜ル〜ト〜どこに行くの〜?」

 

腕を掴み、蒼白な顔で迫ってくる姿は正にホラームービーだ!

オレは敢え無くカカシの腕の中に逆戻りした。

カカシは安心しきった顔で眠りに付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

オレは急に耳に入った鷹の声に目を覚ます。

 

--任務か…

 

オレはそろりとカカシの腕を退かし、家の外に出て森へ向かおうとした。

そのオレの腕を掴む男…さっきまで寝ていた筈のカカシである。

 

「どこに行くの?ナルト」

 

--何で…まさかカカシにも聞こえてた?元暗部だし…

 

「ト…トイレだってば…」

「トイレなら家の中にあるでしょ?」

「トイレ誰か入ってたから、外でしようと思って(^▽^;)」

「ふ〜ん。じゃ、危ないから先生も行くね」

「え゙…いいてっばよ。オレだって一端の忍者だってば!!」

「ん〜でも心配じゃない?」

「う…それはいいけど…なんで手…繋いでるってば?(滝汗)」

「逃げないように(*´∇`*)」

「何で…?!オレ…逃げないってばよ?つーかなんで逃げるんだってばよぉ…(T-T)」

 

--やべぇ…手ぇ握られたままじゃ、影分身も作れねぇ…

 

「ねぇ、ナルト?」

「な…なんだってば?」

「先生に何か隠し事ない??」

「隠し事?!」

 

--ああ…なんかカカシ相手って調子崩れる…つか時間ねぇよ…

 

「例えば、暗部やってるとか?」

「はぁ?!なんでオレが暗部??」

 

--鋭い…やっぱり疑いは消えてなかったか…てかもしかしてそれを確かめる為にオレと一緒に寝たのか?!

 

「否定しないの?」

「なんでそう思うってば?」

 

--ああ、もうどうにでもなれ!!

 

そう思った時だった…正義の死者−黄榴がやって来たのは…

黄榴の蹴りがナイスにカカシの頭上にヒットし、カカシは敢え無く地面に突っ伏した。

それをいいことにオレは黄榴に後処理を託し、ちょっと不安を抱えつつ任務へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ…なんだったんだ…一体…」

 

突然空から落ちてきた何かが頭上を直撃したところまでは覚えているが、それからの記憶がない。

気が付けば、俺はベッドの中で眠っていた。

 

「ナルト…?」

 

全てが夢だったのかと思ったが、確かに腕の中にナルトを抱いて眠っていた感触が残っている。

俺はナルトを探して、ナルトの部屋に行ってみると、ナルトはベッドの中ですやすやと可愛い顔で眠っていた。

しかし俺は気付いてしまった…ナルトがナルトではないことに…

何故ならそのナルトにはヒゲが無かった

ナルトがこんなミスをするとは思えないが…俺はそれを確認するや否や、森の中でゆっくりと帰りを待った。