今日の任務のランクはA。

里の機密文書の奪還及び犯人の始末。

俺たち暗部にとっては大したレベルではない。

任務は簡単に、そして迅速に終了する筈だった。

どういうわけか突然現れた敵さんのお仲間が助けに入るまでは。

 

 

 

 

* 遭遇 - KAKASHI SIDE -

 

 

 

 

「形勢逆転だな」

 

機密文書を盗み出した敵−雨隠れの忍は厭らしい笑みを浮かべてそう言った。

俺と一緒に居た仲間たちは既に倒れ、残っているのは俺一人だった。

俺はチッ、と舌打ちし、この先どうしようか…と考える。

 

「写輪眼のカカシも大したこと無いな」

「?!」

 

突然聞こえた声に、敵の目の前である事も忘れ自分の隣に目をやる。

 

--全く気配を感じなかった…なんなんだこいつは…

 

自分を凝視する俺を一瞥し、呆れた様に鼻でフンッ、と笑うと、

うなじ辺りで結った金色の長い髪をピンッと指で撥ね、敵の方に向き直った。

 

「この里マジで大丈夫なのかよ…この程度の忍で梃子摺る奴がNo.1ねぇ…」

「なっ…」

 

俺は自分が里のエリート暗部だということに誇りを持っていた。

正直ムカついた。

意識的に殺気を飛ばす。

この殺気を受ければさっきの様な事は言えなくなると思ったからだ。

だが、奴はそれを鼻で笑い…そして一瞬にして俺が苦戦していた相手を肉塊に変えた。

呆気に取られる俺を無視して、奴は淡々と処理し、俺たちの目的物である機密文書を投げてよこした。

とりあえず俺はそんなに無礼者ではないので礼を言うと、奴は踵を返してさっさと消えてしまった。

一人残された俺は、暫く放心した後、仲間の始末をしなければと近付く。

するともう息などとうに事切れていた筈の仲間たちは微量ずつだがチャクラが回復してきていた。

恐らくあの暗部がご丁寧に治療までしてくれたのだろう。

 

「…変な奴」

 

俺はあの暗部が消えた方を見つめながら小さく呟いた。

 

「また会えるかな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

物言いは酷いが、仲間や自分を助けてくれた優しい暗部…

あれ以来その暗部の雰囲気が何かと重なって離れなかった。

その何かを知る為に俺は奴の調査を始めた。

といっても名前すらわからない事も相俟って調査は難航した。

三代目に聞きに行っても、吐こうとしない。

一度一緒に任務をさせてくれと頼んだ=脅したが、俺の身の為だ、と言って拒否された。

奴に関しては訳のわからないことばかりだった。

こうして何一つわからないまま月日だけが無情に過ぎていった。