ナルト…いつになったらお前は俺に気付いてくれる?

俺はいつになったらお前に本当の事を伝える事が出来る?

 

 

 

 

 

* 海豚 - IRUKA -

 

 

 

 

 

 

アカデミー入学直前

「ナルトをアカデミーに入れるとは言ったものの…味方が一人でも居らんと危険じゃて…

はてさて…誰にしたものかのぉ…」

 

コンコン。

 

「黄榴、ただいま参上致しました」

「うむ、ご苦労じゃったな」

「報告書は之に」

「確かに。さがってよいぞ」

「はっ」

「いや、待て」

「何か?」

「お主、うずまきナルトを知っておるか?」

「はい…それが何か?」

「どう思う?」

「どう…でございますか・・・?」

「お主の両親は九尾の為に亡くなったそうじゃな」

「はい」

「憎いか?」

「それは九尾に対してですか?それともうずまきナルトに対してですか?」

「…」

「俺は里人の様に九尾とうずまきナルトを同一視していません。

火影様も…他の馬鹿な里人たちの様に里の英雄を化け物と思われておられるのですか?」

「…いや、儂もお主と同じ気持ちじゃよ。もう下がってよいぞ」

「…はい」

 

黄榴が目前から消えるのを見届け、三代目火影はとても嬉しそうに微笑み、そして確信した。

 

--こやつならばナルトを守ってくれるはずじゃ。

 

「決まりじゃな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失格!」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ……」

 

三度目の卒業試験。

オレが落ちたのには理由があった。

そもそもオレがアカデミーに入学した目的は里の誘拐を手引きしている奴らを調査し、殲滅する事。

そのグループがオレの暗殺を先のご意見番に指示されているらしいことがわかった。

勿論そのご意見番は三代目の手で直々に処分されたが、グループにはその事は当然伝わっていない。

そして今日…この卒業試験の隙を突いて奴らが狙ってくると踏んだオレは単独でグループの殲滅を行うことに決めた。

今夜は満月…オレが任務を行わない夜だ。

 

 

 

 

 

 

 

ブランコに座り落ち込むフリをするオレに近付いてきた男−ミズキはオレに囁いた。

 

「キミにとっておきの秘密を教えよう…」

 

 

 

 

 

 

 

ミズキに言われた物をオレは火影の保管庫から盗み出した。

今頃上層部の連中は大騒ぎしているだろう…なんてったって、これはオレを封印する為の巻物だからな。

オレは皮肉気に口を歪め、鼻で笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試験後、俺は三代目に呼ばれ執務室に向かった。

 

「海野イルカ、ただいま参上いたしました」

「うむ…」

「何か」

「……」

「?」

「……頼む…ナルトを…ナルトを助けてやってくれ」

「…どういうことです?!」

「今日は満月の夜なんじゃ…ナルトは力が使えぬ…助けてくれ…イルカ、いや黄榴…」

「だからナルトがどうしたんです??」

「ナルトが殺されてしまう…今日は青瀧も朱寂も源武も誰もおらんのじゃ…もうお前しか…」

「!?ナルトはどこに…」

「禁忌の…森」

 

俺は直ぐに禁忌の森へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「12年前の事件以来、里では徹底した或る掟が作られた」

 

ゲシッ…

 

「…」

「ナルトの正体が化け狐だと口にしない掟だ」

 

ドカッ

 

「……」

「その巻物はてめぇを封印する為の巻物なんだよ!!とっとと封印されやがれ!」

 

バシッ…

 

「言う事はそれだけか?」

 

傷ついた腕から流れる血を一舐めし、オレはミズキを見上げた。

ミズキはオレを蔑む様な強い嫌悪を宿した瞳でオレを見下ろす。

そのミズキに唾を吐きかけて、笑ってやる。

 

バキッ…

 

--チッ…今ので肋骨逝ったかな…

 

「何だと?もう一度言ってみろ!」

「お前のくだらない話を聞いているのも飽きたって言ってんだよ」

「化け狐風情が偉そうに!!」

 

ミズキから飛んできた蹴りをスッと避けると、ミズキは驚きを隠せない様子でオレを凝視した。

 

「九尾の力がどれほど強大か…それを制御する事がそんなに簡単だと思うか?」

「どういうことだ?」

「今夜が満月だったのが、てめぇの運の尽きだ…」

 

雲の隙間から現れた満月の光に照らされ、オレの瞳が紅く染まる。

ゆっくりと身体から溢れ出す紅い…血の色をしたチャクラがミズキを取り囲んでいく…

 

「うっうわぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

--ナルト…

--凱亜…起きてたの?

--お前の強い思念を感じた…力を開放するのか?

--いや、使わないさ。オレは二度と凱亜の力は使わないとじいちゃんと約束したからな。

 

「くそぉぉぉぉ!!この化け物がっ!おい、お前ら出て来い!!」

『ハッ』

「?!…クソッ…」

 

ミズキの号令で三十人は下らない忍たちが現れた。

隠れていた忍に気付かなかったオレはチッ、と激しく舌打ちした。

否、気付かなかったのではない…気付けなかったのだ…

それほど九尾の巨大な力を抑えるには体力も気力も必要なのだ。

 

--ナルト!このままでは!!

--わかってる…誤算だったぜ…まさか組織がこれほど大規模だったとはな…

--ナルト!!我の力を解放しろ!

--ダメだよ凱亜…八年前は満月の夜じゃなかったからあの規模で済んだんだ…今使えば確実に里は消滅する…

--だが、このままではお前が死んでしまう!

--ごめん凱亜…それでもオレはじいちゃんの愛するこの里を守りたいんだ。

--この里がお前をこんな目に追い込んでいるのだぞ!!

--ごめん凱亜…ごめん…ごめんみんな…

 

ナルトは死を覚悟した。今ここには青瀧も朱寂も源武も居ない。

忍たちの放った手裏剣がナルトに向かってくる。

ナルトは静かに瞳を閉じ、自分の死を待った。

 

 

 

 

ズバババ