禁忌の森。 たくさんの貴重な虫たちが舞う虫の楽園。 そこには金色に輝く美しくも儚い子供が居た
参 * 紫乃 - SHINO -
紅玉虫は紅い宝石の様な光沢を持ち、寒い地方を好んで生息する虫だ。 その虫を発見したのは、アカデミーからの帰宅途中だった。 雪国を好むその虫が何故ここに居るのかは不明だが、なかなか手に入らないこともあり 俺はその虫に誘われるようにこの禁忌の森に迷い込んだ。 紅玉虫自体は捕まえたのだが、既に日も沈んだ暗い森の中は迷うには充分な場所だった。 俺は当てもなくただゆっくりと警戒しつつ先に進んだ。 暫く歩いた先に見つけたのは、大きな屋敷だった。
「…こんなところに家があったとはな」
俺は助けを求めようと扉を叩く。 だが家の主は一向に出てくる気配がない。明らかに電灯は灯っているのだが… 諦めて踵を返そうとしたその時、俺の腕を掴む者が居た。振り返るとそこにはよく見知った顔が居た。
「うずまき…ナルトか?」 「そうだってば。油女シノだっけか?こんなところで何してるってば??」 「俺はこの虫を追ってこの森に入ったら迷った」
そう言って俺は自分の持っている虫かごをヒョイと挙げてみせる。
「だったら今日はもう遅いし、泊まっていくといいってば」 「…ここは」 「三代目の別邸だってばよ。オレたまにここに泊まりにくるんだってば」 「…そうなのか」 「ナルト〜誰か来たのかぁ?あれ、おめぇシノじゃねぇかよ」 「ム…シカマルか?」 「まぁ立ち話もなんだし、一先ず上がるってば」
ナルトは俺を客間に案内した。
「珍しい客だな」 「ネジ、オレってばちょっと用事あるから、シノに茶でも出してやってくれってば」
そう言ってナルトはドタバタと二階に上がってしまった。残されたのは俺とシカマルと日向ネジ。 シカマルならまだしも、ネジとナルトはどのような関係なのだろう。 黙り考え込むオレを、今の状態に戸惑っているのだと判断したシカマルはすかさずフォローを入れた。
「まぁ気にすんな。あいつはいつもああだから」 「そうか…ここにはよく来るのか?」 「いんや、たま〜に。ナルトもたまにしかいねぇし」
シカマルと雑談している間に茶を淹れてきたのだろう、ネジが二人分の湯呑を持ってきた。
「オレのはねぇのかよ」 「残念ながらオレの腕は二本しかなくてな、二人分しか持てん」 「盆使えばいいだろ!」
文句を言いながらシカマルは自分の茶を淹れに台所に消えていった。それをネジは面白そうに笑っていた。
「…お前たちは仲がいいんだな」 「そう見えるか?」 「違うのか?」 「さあな。ただシカマルをからかうのは面白いがな…」
フッと鼻で笑うと、ネジは読みかけの書物に目を戻した。 暫くして自分の分のお茶と一人分の食事を手にシカマルが帰ってきた。
「お前迷ってたって事はメシ食ってねぇだろ?」 「ああ…すまない」 「ナルトのお手製だから美味いぜ。ホントは他の奴には食わせたくねぇんだからな…味わって食いやがれ」 「そういえば、ナルトは何をしている」 「さあな…」 「あいつはいつも何やってんのか俺たちですらかわからねぇ…」
俺は不思議に思ったがそれ以上は聞かなかった。 食事を食べ終えた俺は何をすることもなく虫でも居ないかと庭に出てみた。 そこに咲き誇る美しい花々に群がる虫たちの中には、この地方に居る筈もない珍しい虫たちがたくさん居た。
「あれは…電灯の様に光り輝くと言われる蛍光虫…あっちは花が咲誇る様に美しいと言われる花咲虫… 一体なんなんだこの庭は…」 「んな珍しい虫なのかそれ?ナルトがどっか行く度に連れて帰って来やがるから、いつの間にか虫屋敷だぜ…」 「馬鹿な…この虫たちはこの地方には生息している筈がない貴重な虫ばかりだぞ…」 「マジかよ…(ヤベ…)あっ、雨が降ってきたから部屋に戻ろうぜ!」 「…雨など降っていないが……なっ?!何故この屋敷の周りだけ雨が降っていない?!」 「……」 「シカマル…ドジを踏むならもっとマシなドジにしろ…」 「げっ?!ネジ…なんで居るんだよ…」 「…お前まさか気付いてないのか?」 「何をだ…ッ?!ナルトは?」 「多分気付いてるだろうが、降りてこない事から見て俺たちでやれという事だろう」 「ひぃふぅみぃ…10人か…いけそうか?」 「誰に言っている?」 「けっ。シノお前家に入ってろ」 「なんだ?」 「来るっ!」
そこに現れたのは額当てからして霧隠れの忍だった。 奴らは最初何かを探すように屋敷の周囲を回っていたが、ふと何かに気付いた様に立ち止まった。 そして徐に地面に手をかざすと地中から丸い透明な珠が現れ、それを勢いよく叩き壊した… すると今まで屋敷の周りだけ降っていた雨が急に降り注ぎ始め、虫たちが辺りに飛び去った。
「チッ…結界石が…」 「シカマル!」 「わぁってるよ」
シカマルは俺には全く見えない速さで何かの印を結んだらしい。いつしか俺の周りには結界が出来ていた。
「そっから出るんじゃねぇぞ」 「わかった……だが一つだけ…」 「なんだよ?」 「あの花壇の周りにも結界を張ってくれないか?寒さや雨を嫌う虫がたくさん居る…」
シカマルは素早く印を組み、俺が頼んだ様に花壇一帯に結界を張った。 安心した俺は小さく息を吐き、事の成り行きを見守る。 俺たちを取り囲むように集まった忍たちは面白そうに俺たちを見て笑っていた。
「九尾を渡してもらおうか…」 「何のことだ」 「ではこう言えばわかるか?うずまきナルトを渡せ」 「やなこった」 「フン…お前たちたかだかガキ三人で何が出来る…ハハハ」 「これだからバカな忍は困るぜ…あぁめんどくせぇ…」 「フッ…まぁそう言ってやるな。俺たちの実力に気付かないのも無理はない…所詮この程度の忍ではな…」 「なんだ…と…グハッ…」
次の瞬間隊長らしき男を除く全員が地べたに崩れ落ちた。
「お前たち何者だ…」 「さぁ何でしょう?」
シカマルたちは素早く印を組むと真っ黒な衣装を身に包んだ二十歳くらいの男に変化した。その姿はまるで…
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