「最近シカマルが変なのよねぇ〜」

「そうだってば?」

「いっつも傷だらけでアカデミーに来るんだ」

「それに何だか疲れてる顔がより一層ヘタレてるっていうか…」

「いの…それちょっと酷いってば…」

 

シカマルは特訓と言う名の拷問を毎晩受けていた。

ナルトが楽しそうに出す術(禁術含む)を避けて避けて避けまくる事でシカマルの回避能力、

そして術に対する耐性は格段にレベルアップした。

更に実際に術を受ける事でそれぞれの術の特徴を的確に捉え、次の一手を判断する速度も

以前と比べカナリ上昇した。

ただ実際の術の使用に関しては、ナルトの家の書物から得た情報とナルトの繰り出す術の印

を逐一覚えていた事で知識はあっても、チャクラが足りず使えないと言うのが現状である。

現在シカマルはIQ200をフル活用しチャクラが少なくても大技が使えるように改良してやる!と

頑張っているらしい。

また最近では元々素質のあった暗号解読の訓練がてら、人手不足の解読部に貸し出してお

り、早くて正確だ、とその評判は高い。

 

「ねぇ、ナルトなんか知らない?」

「さぁ…知らないってば」

「そうだ!」

 

いのが目をキラキラさせている…何かを考え付いたようだ。

 

「シカマル、毎晩どこかに出かけてるらしいのよ」

「ふむふむ」

「その後をつければ何してるかわかるじゃない?」

「おぉ!よ〜し、行くってばよ」

「決まりね♪じゃ、集合場所は…「シカマルの家の斜め前の甘味処!おかしは500円までね〜」

「ハイハイ…わかったわよ。じゃぁそういうことで、ナルトも夕方に甘味処ね」

「わかったってばよっ☆」

 

教室へ戻るいのとチョウジの背中を見送りながらナルトは口端を少し持ち上げ小さく呟いた。

 

「次行きますか( ̄ー ̄)ニヤリ」

 

 

 

* 猪蝶 - INOCHO -

 

 

 

 

ナルトは今、いのとチョウジと共にシカマルの後をつけていた。

シカマルが向かった先は図書館だった。

誰も居ないか確認し、シカマルは二十歳くらいの男に変化する。

いのたちの気配はナルトが周囲に結界を張っている為、漏れる事はない。

シカマルが変化した姿は、髪を解いている以外はただシカマルを大きくしただけという感じだ。

だが、ただ一つだけ…彼の左耳には深い紅色の珠が揺れていた。

 

「シカマルったら、夜の図書館で何してるのかしら」

「それよりも、何で図書館でボロボロになって帰ってくるのさ…」

「そうよね…それに変化までして、怪しすぎるわ」

 

入口付近に立っているシカマルに向かって誰かが図書館から歩いてきた。

暗闇で顔ははっきり見えないがどうやらとても親しい仲だということが伺える話し振りだ。

ふと、シカマルの視線がこっちを向いた気がした。

静かにシカマルはゆっくりとナルトたちが隠れている方に向かって歩き出した。

 

「ハァ・・・ったく、なにやってんだてめぇら」

 

アハハ…と誤魔化す様に笑いながら立ち上がるいのに続いてチョウジも立ち上がる。

そしておかしな事に気が付いた。

 

「あれ…?ナルトは?」

「あぁ〜ホントだ〜。どこ行っちゃったんだろ?」

「さてはナルトの奴、一人で逃げたわねぇ(`へ´)プンスカ」

「何をそんなに怒ってるんだい?」

 

突然聞こえた知らない声にいのは顔を上げる。

年は二十歳くらい。

ナルトと似た金色の長い髪をうなじ付近で結っている。

 

「きゃ〜〜〜〜〜vv超美形よ〜〜〜vvv」

「いのぉ…うるさいよ…」

「私、山中いのって言います。お名前は?」

 

目をハートにしたいのに、男はにっこりと微笑む。

その笑顔にいのは今にもぶっ倒れそうな勢いだ。

 

「通り名だけど白狐と言います。いのちゃんと…」

「チョウジだよ…モグモグ」

「チョウジくんか。よろしくね(o^∇^o)」

 

白狐の横で訝しげな顔をしているシカマルにいのは容赦なく捲し立てる。

 

「何でこんな素敵な人のこと黙ってたのよ!さては一人で独り占めしようって魂胆ね。

大体私たちに内緒にしておこうなんてひゃ「ところでシカマルは何をしてるの?」

 

いのを遮り質問するチョウジに応えたのは白狐だった。

 

「興味ある?」

「うん、そりゃぁ…気になるよ」

「ありますありますありま〜す!!!」

「じゃぁやってみる?」

「何だかわからないけどやってみま〜す」

「ちょっ、バカやめとけ!後悔するぞ!!」

「ずるいわよっ!シカマルばっかりこんな美人さんと!!」

「ちがっ…まぁ、それもそうだが…じゃなくて」

「だったらシカマルはなんでこんなに毎晩通ってるのさ?」

「それはだな」

 

言おうとして言葉に詰まる。

何故かと言うと隣から浴びせられる微妙な殺気が伝わってきたからだ。

表面上は笑っているが、これ以上喋るとヤバイ…。

 

「何よ〜?」

 

いのは急に喋らなくなったシカマルを訝しげに見つめる。

 

「何でもねぇ。もうどうなっても知らねぇからな!一応ちゃんと忠告はしたぜ?」

「じゃぁ、決まり☆シカマルくん、今日はお手伝い休みにして修行しようねヽ(=´▽`=)ノ」

『え゙…しゅぎょ…ぅ?!……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』

「だから言っただろ…後悔するって」

 

その次の日、猪鹿蝶の三人は仲良く生傷を作ってアカデミーに登校しましたとさ。