//観察日記//

 

 

注意事項:

一:絶対に学校など奴に見つかる場所で書かない事。

二:四六時中持ち歩くのは危険なので、安全な場所に鍵を掛けて保管しておく事。

三:書いている事を公言しない事。

四:奴に絶対バレてはならない。

 

 

 

観察日記を始めて二ヶ月。

まもりはヒル魔父が書いてくれた注意事項通りに書いてきたつもりだ。

学校や部室では書いていない。

保管は…家に自分だけで管理できる鍵付きの場所などなく、しょうがなく肌身離さず持ち歩いている。

まぁ誰もカバンの中など見ないだろうし、部活の時もロッカーに鍵を掛けて保管しているので問題はないだろう。

書いている事は誰にも言ってないし、バレることはないはずだ。

今日も帰宅したまもりは今日一日の観察結果を記す。

 

 

 

 

 

 

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やっぱり試合中の彼はカッコいい。

いつもの卑劣な悪魔とは大違い。

観察日記を始めてから、彼をずっと観察し続けて2つ気付いたことがある。

1つ目は、

彼は言葉はあんなだけど、ホントはとっても優しい。

酷い事ばっかり言うけど、時々、ホントに時々だけど…からかうような顔の間に優しい笑顔が混ざること。

いっつも自分ばかり無理をして、誰にも気付かせない強さと、みんなを気遣う優しさ。

ホント馬鹿なんだから…

2つ目は…

2つ目は………

 

 

 

 

 

私はヒル魔君が好き。

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まもりは、はぁ、と大きなため息をつきながらさっき書き終えたばかりの日記帳を見つめる。

 

「いつの間にかこの日記帳も終わりそう…」

 

ぽつりと独り言を言いながら、残りのページを数えてみる。

と、なんだかが妙にぶ厚いページがあることに気付く。

よく見ると前のページと糊みたいなもので貼り付けられているみたいだ。

まもりは慎重にそのページを切り離す。

そこには小さく折りたたまれた手紙が挟まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

--まもりちゃんへ

 

君がこれを見つけたということは、この日記帳もそろそろ終わり近づいたということだね。

結構楽しかったでしょ?

僕は以前君に、最初は彼女の弱みを握ってやろうっていう邪な気持ちから始めたんだって言ったよね。

でも本当は最初から彼女に惹かれてたんじゃないかって、今では思うんだ。

だって、こんなにも長い間1人の嫌いな人間を観察なんてできるかい?

ここまで観察してきた君ならわかると思うんだ。

きっと君の観察日記も最後に行けば行くほど、「好きだ」って書いてあるはずだよ?--

 

 

 

 

 

 

本当にその通りだった。

最初はアメフト部員たちもたくさん出てきたし、ヒル魔に関して言えば文句ばかり書いていたのに、

書いていたはずだったのに…

なのに最後に近づけば近づくほど、他の部員は一切登場しなくなり、

彼は今日どうだったとか、彼が好きだとか、好きだとか、好きだとか…。

まもりはヒル魔に対していい感情は持っていなかったとしても、

弱みを握るためだけにここまでやる程恨みはないし、そんなに暇でもない。

でも実際日記は最後のページまで到達するほど続いたし、彼の観察自体とても楽しかった。

だからヒル魔父の言葉はすんなりと受け止めることができた。

しかし、その最後に書かれた言葉に彼女は一瞬真っ白になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

--そうそう、今まで一生懸命注意事項を守ってきたと思うんだけど…奴らは何でもお見通しだよ。

僕も完璧にばれない様にしてたつもりだったんだけどね、最後のページをめくったら…

まぁ、これは楽しみに取っておかないとね。

じゃぁ、これからも妖一のことよろしくね。

君が早くヒル魔家にお嫁さんに来てくれるといいなぁ。

蛭魔 一斗--

 

 

 

 

 

 

 

 

自分は完璧にやってきたつもりだ。

絶対にバレるわけは無いと思う。

でももし、ばれていたとしたら…彼に自分の気持ちはばれている?

そう思ったら急に体温が上がってきた。

ふと「最後のページ」というのが気になって、日記のページをめくってみる。