「そういえば……さっきリボーン嫌がらなかったなぁ〜なんでだろ?」

「おい」

「にしても、可愛かったよなぁ〜今と大違い…」

「……おい、ツナ」

「ん?」

 

不意に耳元に声が聞こえて慌てて我に返ると、何故かリボーンを抱き締めていて…

さっきまで10年前のリボーンを抱いていたのだから当然と言えば当然なのだが。

 

「あぁ〜ごめん、リボーン」

 

ツナは慌ててリボーンに回していた手を離した。

少しリボーンが残念そうな表情をしたように見えたのはきっと気のせいだろう。

 

10年前の僕。10年後の君。--10年後の君。

 

「あ〜〜もぅ、ビショビショじゃん…何やってきたのリボーン?」

「そういうお前はどうなんだ」

 

小さなリボーンは入浴中だったらしく、ずぶ濡れ。

そしてそれを抱いた自分も当然…ずぶ濡れだ。

リボーンも入浴中の自分と入れ替わったのだから当然濡れてるのはしょうがないかも。

ツナは乾いた笑いを浮かべながら、上着を脱いでみたもののすでにシャツまでぐっしょりだった。

その様子をジッとみていたリボーンは、

シャツの下には基本的に何も着ないツナの素肌が濡れたシャツ越しに露わになり、

思わず息を呑んだ。

 

「とりあえず、風呂だな」

「そうだね。このままじゃ二人とも風邪引いちゃうし」

 

 

 

 

 

 

二人きりの浴室…

浴槽に流れ込む水の音だけが響く。

ツナを求める自分の欲求がすでに押さえきれないものと認識していたリボーンは

浴室へ着くなり、服を脱ごうとしていたツナを壁に押し付け、その唇を激しくむさぼった。

 

「え…ちょ、リボ…なにす…る……んぅんn…」

 

さっき10年前のツナに与えた口付けと同じ甘い口付け。

さきほどと年齢は違えど同じ人物の筈なのに、目の前のツナはなんて甘美なのだろう。

同性だというのに、なんて自分をそそるんだろう。

ツナは覚えているだろうか…10年前に味わったこの感触を…

 

「・・・あれぇ…この感じ…なんか昔…」

「覚えてるか、ボス?」

「………?」

「…忘れているなら思い出せ、ツナ。10年前のあの時の事。あの時の言葉を思い出せよ」

 

耳元で囁かれる切なくて甘くて、そして低い声。

その声に揺さぶられるように古い記憶がみるみる鮮やかな色を伴って蘇ってくる。

 

「あ……」

 

嘗て記憶の奥底に封印した甘い記憶。

感触すら思い出せるほど大事にしまわれていた初めての温もり。

同時に少しずつ思い出せなかった、否当時の自分では理解できなかったあの言葉の羅列も

耳の奥に響き渡る。

今なら理解できる。

あの時、リボーンがなんて言ったのか。

 

「10年後の俺は………お前を……愛してる…」

「思い出せたじゃねぇか。それがお前がずっと思い出せなくて悩んでた事の答えだ」

「気付いてたんだ」

「俺はお前のことなんてなんだって知ってる」

「ウソツキだなぁ〜自分の気持ちさえわからなかったくせに」

「……」

「オレの気持ちもわからなくて、ずっと焦ってたんだろ?」

「そういうお前はどうなんだよ?」

「……オレも今気付いたよ。…オレもお前が好きだよ、リボーン」

「そんなの足りねぇ。そんな『好き』なんかじゃ足りねぇぞ、ツナ」

「お前がいないとダメなんだ」

「ダメツナ…そういう風に育てたんだから当たり前だ」

「お前は死ぬまでオレのものだ」

「言うようになったじゃねぇか。昔のお前ならそんな歯の浮くような台詞言えなかっただろうな」

 

フッと珍しく唇を薄っすら開けて笑うと、ツナの後頭部に手を回し、微笑みながら口付ける。

そして唇を離すと、また笑う。

本当に嬉しくてしょうがないことを隠そうともしない、リボーンがひどく愛しかった。

 

『離れたいって言ってももう絶対に離さないからな!』

 

同時に漏らした同じ言葉に二人は驚くでもなく、ただ笑みを浮かべる。

それはとても、とても幸せな光景だった。

 

「愛してるよ、リボーン」

「愛してるぞ、ツナ。っていうか、俺もう限界だ…」

「……え゙…?!ちょっ…」

「ツナが欲しい。ツナが抱きたい」

「……オレ、やられる方なわけ?!」

「たりめぇだろ…誰がどう見たってお前がヤられてる方がそそられる」

「それって喜んでいいことなんだろうか…なんか巧く言いくるめられてる気が…」

「俺は抱きたいから抱く。先生に逆らおうなんざ百万年早ぇ。

俺の愛の深さを身体中に刻み込んでやるから、大人しく抱かれとけ」

「……お前ってホント…なんていうかさ、しょうがねぇヤツ」

 

フッと笑みを漏らすとツナは愛しい愛しい先生に口付ける。

それを了解と捕えたリボーンは愛弟子の身体を優しく抱き締め、ゆっくりと侵食を開始した。