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「さてと…リボーン、お風呂入ろっか」
沢田家では一応赤ン坊なリボーンが湯船で溺れないようにと、 お風呂は必ずツナが付き添うようになっている。 と言っても、本当に付き添っているだけで、リボーンの身体に触れる事はおろか、 湯船に一緒に入ることすら出来ないのが現状である。 寧ろ、リボーンがツナと一緒に入ることを許容している事自体不思議なほどである。 この日も相変わらずさっさと身体を洗ってしまったリボーンは、 愛用の浮き輪にすっぽりとはまりながら、気持ち良さそうに湯船に浮いていた。 まぁ、表情はいつも通りの鉄面皮なんだけれども。 ツナ的にはこの日は比較的イイ顔していたらしい。 そして、大体こういうリボーンがいい気分の時に限ってやってくるのが、この子供であり… いつも面倒を引き起こすのもやっぱりこの子供なのだ。
10年前の僕。10年後の君。--はじまり
ガラッ
勢いよく浴室の扉が開き、ダダダ…と駆け込んできた子供は 期待を裏切ることなく入口付近ですっ転んだ。
「が・ま・ん……」
苦笑いを隠す事もせず、ツナは倒れたままいつもの口癖を吐く子供を抱き起こしに行く。 と、急に起き上がった子供にヘッドアタックを食らわされ、思わずしゃがみ込んだ。 当の本人も頭に走った激痛に泣きそうになっている。 そんな二人を見てリボーンは鼻でフンと笑う。
「バカか…」 「くっ…おのれ、リボーン!!今日こそは倒してやる!!」
ササッと立ち上がると、咄嗟に手榴弾を投げようとするが、 リボーンが容赦なく放ったランチャーに自分諸共吹っ飛ばされていった。
「うえぇえぇぇぇえ…」 「はぁ……ったく、ランボこっちおいで」 「ヅぅナ゙ぁ……」
どうやって帰ってきたのかツナに擦り寄ってきたランボを自分の方に引き寄せると、 ツナは徐に自分の膝の上に座らせた。 そんなツナを大きな目で見上げるランボにニコリと微笑むと、 ポケーっとしたランボの身体を洗い始める。 それが結構気持ちいいらしく、ランボも大人しくツナに身を任せた。
「まったくぅ〜リボーンに勝てないのがわかってて、どうしてまた立ち向かおうとするんだよ」 「ランボさんは強いんだ!リボーンを倒してボンヴィーノのボスになるんだぞ!」 「アハハ……ってコラ、ランボ、暴れるなって!!も〜お風呂に入るのは頭洗ってから」 「は〜い」
普通にしてればランボはイイ子なんだよな…と思いつつ、ツナはランボの柔らかい髪を洗う。 ランボは気持ちいいのか鼻歌をフンフンと歌っている。 と、カチャっと不穏な音が聞こえたので、ツナがその方向に恐る恐る顔を向けると その様子をさっきから無言で見ていたリボーンが何故か銃を構えていた。
「ちょっ、リボーン!なにやってるのっ?!」 「さっさとツナから離れろ、バカ牛!」 「ハィィ?!」 「離れろ」 「なんだとっ?!ランボ様の至福の時間を邪魔するなんて、 リボーンめっ、今度こそ覚悟!!」
ランボはツナの膝から下りることなく、手当たり次第近くにあるものをリボーンに向かって投げるが、 全て見事に跳ね返され、次々とランボにクリーンヒットしていく。 当然その被害はランボを抱いているツナにも及ぶ訳で。 ヒクッとツナの眉間に皺が寄りかけたその時、
「うわぁあぁぁあああ!」 「あっ…」
ランボはいつもの通りあのバズーカを持ち出し引き金を引いたのだった。 が…… いつもならば自分に向けて打つ筈のバズーカは、髪を洗っている途中に暴れた為、 泡が目に入って見えず、また引き金を自分が普通に引いている事に気付かなかったアホ牛のせいで 予想外にもリボーンに向けて放たれてしまった…
「最悪だ…っていうか、リボーン!大丈夫?!」
狭い浴室は10年後のリボーン召還の為のもくもくとした煙に包まれていた。
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