#168686 * 深い奈落に落ちる

 

ナルトと出会ってから十数年…

子供の俺にはわからなかった感情もはっきりと理解できるほど

俺たちは大人になった。

勿論、この気持ちはナルトには伝えてねぇし、

当然、伝える気もねぇ。

普通に考えて、男が男を好きっていうのはマジで異常だ。

確かに忍の間では男同士でセックスすることなんて

よくある話だけど…

そいつらと完全に違うのは、俺は自分の欲求を抑える為じゃなく

ナルトが好きだからヤりたいわけで。

やっぱり俺はオカシイ。

 

「…マル…おい…シカマル!」

「…んあ?」

「んあ?じゃねぇよ!ったく…よくそんな半寝状態で走れるな」

「寝てねぇよ。ちょっと考え事してただけだ…」

「へぇ〜シカマルさんたらエッチな事考えてたんデショ?」

「…///ばっ…バカな事言ってんじゃねぇよ!!」

「欲求不満なら私がお相手しましょうか?ウフvv」

「なっ///」

 

ボスンという音とともに現れた裸体の女性…

言うまでもなくあのお色気の術だ…

一瞬本気で相手してくれるのかと思ってしまった。

冗談だとしてもそんなこと言われたら…理性なんて簡単に飛ぶ。

 

「ざけんな!ったく…走りながらそんな卑猥なもんに変化すんなよ」

「自分だって走りながら寝てただろーが、バカシカ」

「…だから寝てねぇって」

「しゃーねぇ、お疲れのシカマルさんの為に今日はここで休むか」

「だから、寝てねぇって…まぁ、明日の船の時間まで余裕もあるし

休むか」

 

俺とナルトは今、五影から預かった同盟の書状を遠く海を渡り

露の国の革命家に届ける任務を無事に終え、

里へ帰る途中だ。

思ったより長旅になってしまったのは嬉しい誤算か…

多忙を極める俺たちは昔のように常に共にいることは叶わず、

こうして長く一緒に居るのは久しぶりだった。

ナルトは近く火影に就任することも決まっており、

もうこうやって共に任務を出来るのも最後かもしれないし…

そう思えば思うほど、身体中が疼く。

十数年も蓄積し続け、吐き出されることのなかった欲望は

当然それに比例して日増しに大きくなり、

今では下らない妄想に思考を奪われる日々…

壊れて…しまいそうだ。

 

「じゃじゃーん!」

 

ボーっとしていた俺の前に透明な液体の入ったビンが

差し出される。

 

「なんだよ、これ?」

「露の国で貰った。なんかすげぇ強い酒らしいぜ。

楽しみだwなぁ、飲もうぜ。先に倒れた方が負けな」

「はぁ?!勝負すんのかよ?」

「じゃねぇと面白くねぇだろ?せっかく手に入った強い酒。

それを目の前にして戦わねぇと男が廃る!」

「や、別に戦わなくても廃れてねぇと思うけど…」

「なんだよ、自信ねぇの?」

「勝ったらなんかくれるのか?」

「う〜ん。じゃぁさ、勝ったら今夜一晩負けた方を服従させることが

できるってのはどう?」

「服従…ねぇ…どんなことでもいいのか?」

「そりゃ服従って言うぐらいだからな…夜のお供でもなんでもなw」

「だぁかぁらぁ〜俺は欲求不満じゃねぇ!」

「(笑)オレが勝ったら一晩中マッサージとか。あと帰る途中の任務

全部やってきてもらうかな〜頑張るぞ!」

 

冗談が過ぎる…と思いつつも、仄かに期待してしまう。

ホントは俺の気持ちとか考えとか全てお見通しなんじゃないかと

思うほどコトは巧く進んでいて…

ナルトを抱けるのは今日しかない!そんな気がした。

そして俺の頭の中はナルトを抱くことだけでいっぱいになった。

 

「んで、どうやって勝敗決めるんだよ?お互い潰れるまでやったら

その後の服従もくそもねぇだろ」

「こ・れvv」

「…野球のバット?!つーか、どっから出てきたんだよ…」

「○次元ポケットに決まってんじゃん。」

「……決まってんじゃんって…」

「まぁまぁ(笑)」

「ハァ…で?」

「んでだ。一杯飲む度にバットを額に当てて10回回る。

そんでもって、正常に歩行できなかったヤツが負け」

「……」

「んじゃ、まず一杯目」

 

ナルトに言われるがままに目の前の小さなコップに口をつけ、

一気に液体を流し込む。

喉の奥に辛さと強い熱が広がった。

 

「なかなかどうして、悪くねぇ…」

「だな。結構ウマイ。んじゃ、二杯目いくか」

 

こうして飲んでは回りを繰り返す事数十杯目…

お互い引く事はなく、勝負がつく前に酒がなくなるんじゃないか、

と思ったその時、ナルトがストンと片膝を付き眉間を押さえた。

 

「……オレの負けだ」

 

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