今日の任務は巻物を火の国の大名に届けるだけの簡単な任務だった。

にも拘らず、ナルトは何故これ程までに問題を引き起こすのか…

もう業とやっているとしか思えないその行動に呆れながらも俺はすぐに側に駆けつける。

 

「ナルト!!」

 

 

 

 

 

 

 

グラリと体が傾く。

この下は深い川だ…それに流れも速くないから落ちても大したことはない筈。

と言ってもオレがこのまま落下する事はないのだけれど…

案の定カカシが素早くオレの元に移動し、オレの腰に手を回すようにして抱きかかえる。

 

「ナ〜ルト、あんまりお約束みたいなことしないでよねぇ〜ったくぅ!」

「ごめんってば先生…」

「もうびっくりするでしょ〜」

 

相変わらずの間延びした声のカカシだが、目は笑っていない。

カカシは時々こんな目をする…強い光を宿した獣が獲物を狙うような目。

それほどまでにオレが嫌いならば、この手を離して崖下に突き落とせばいいのに…

 

 

 

 

 

//恋愛//

 

 

 

 

 

いつからだろうか…

オレの監視役であるカカシは任務の時以外はいつもオレが眠るまで家の外で監視している。

それがいつからかオレが眠りにつくと決まってオレの部屋に侵入し、

眠るオレに口付けを落として消えるようになった。

最初は悪質な嫌がらせかとも思ったが、それでは説明がつかない程その口付けは優しかった。

オレに口付けるカカシの唇は僅かに震えていて、これがあのカカシかと疑った。

カカシはカナリの色男で、女にも困らない筈だ…奴にとってはキスなんて子供の遊びの様なものだろう。

その男が毎夜毎夜同性のオレに口付けては去っていくこの行為がオレには全く理解できなかった。

単なる嫌がらせにしても態々こんな面倒なことをする必要があるのか?

カカシはオレが起きているなんてちっとも気付いていないだろう…

だからこそ真意を尋ねることも出来ず、柄にもなくオレは悩んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「ナ〜ルト?どうしたのボーっとしちゃって、お前らしくない」

「オレらしいってどんなの?先生がオレの何を知ってるって言うの?」

 

言ってしまってからハッと息を呑み、自分の口を手で塞ぐ。

カカシは何も言わず、いつもの暢気な顔でオレを凝視していた…

 

「ごめんってば…オレ、何かちょっとびっくりして混乱してるんだってば!!」

 

オレは慌ててカカシの視線から逃れるように、腕の中から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「も〜ナルト、何やってんのよ!!大体ボーっとし過ぎなのよ、アンタは!」

「ウスラトンカチが…」

「ごめんってば〜」

 

一瞬…このまま連れ去ってしまおうかと思った…

俺を惹きつけて止まない金色…その金色の言葉に俺は自分を見失いそうになった。

 

「俺の何を知ってるの…か。じゃあ、教えてって言ったら教えてくれるの?ねぇナルト…

俺はこんなにもお前の事を、お前の全てを知りたいと思っているのに…いつになったらこの想いはお前に届くんだろうね」

 

俺の小さな呟きは風に乗って谷底へ流されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜はいつもと違っていた…

まるでオレが目を開ける事を願っているかのように激しい口付け。

空気を得ようと開けられた隙間から容赦なく舌が入り込み、余りの苦しさにオレの目から涙が零れる。

それでもオレは目を開けなかった。

カカシは暫くオレの唇を堪能し、オレの目尻に溜まった涙を一舐めした後、

いつものように優しいキスを落として消えた。

 

「なんなんだよ一体…」

 

カカシが去ったのを確認すると、オレは忌々しげに唇を拭った。