『ナルト、ここは俺たちに任せろ!!』

「だけど…」

「サスケはお前の大事な奴なんだろ?」

「……」

「だったらさっさと行け!」

「ワンワン!」

「ありがとな…みんな…」

 

イタチが居なくなってから五年…

オレはあの時のイタチと同じ年齢になった。

イタチの弟であるサスケは、イタチが言った通りオレの側に居てくれた。

暗部としてオレの隣に立ち、共に戦ってくれた。

オレの事を知ってもなんて事ないように気にしないところまで、ホントにイタチそっくりで…

時々似てる仕草とか表情とかされると思い出して涙が出そうになる事もあった。

 

 

 

 

 

//友愛//

 

 

 

 

 

「サスケ!!」

「来たか…」

 

サスケはさもオレが来るのがわかっていたかのように、オレを振り向きもせずそう言った。

 

「サスケ、お前までオレを置いて行くのか?!」

「ナルト…」

「イタチが居なくなって…だけどお前が側に居てくれたから、オレ今まで生きて来れたのに…

…お前までオレを置いてっちまうのかよ!!」

「…すまない、ナルト…俺は全てを知ってしまった…何故家族が死んだのか、

何故兄が罪を被ってまで里を抜けなければなかったのか…」

「だったらオレを連れて行け!」

「ダメだ…俺は一人で行かなければならない。兄がそうしたように…

それが俺の為であり、お前の為なんだ…」

「わけわかんねぇよ…クソ…」

 

ガックリと地面に膝を付き俯くナルトの頭にサスケは手を伸ばそうとする。

しかし、突然顔を上げたナルトの瞳に宿る強い光に伸ばそうとしていた手を止めた。

 

「こうなったら…力尽くで止めてやる!!」

「ナルト…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ずっと共に戦ってきた二人…その力はほぼ互角だった。

互いに拳を交わしながら、互いの友情を確認しているような不思議な感覚に二人は捕らわれていた。

次第に何の為に戦っているのか馬鹿らしくなってくる。

憎しみあっている訳でもない、相手が嫌いな訳でもない…ただ止めたいだけなのに…

ナルトは諦めたように一度振り上げた拳を下ろし、その場に仰向けに倒れこむ。

見上げた空からたくさんの水の粒が降り注ぐ。

まるで自分の代わりに空が泣いているようだとナルトは、フッと笑みを漏らし

覗き込むように立っているサスケを見た。

 

「本気…なのかよ…」

「本気だ。俺は行く」

「…勝手にしろ」

 

ナルトは忌々しげにサスケを見上げていた瞳を逸らした。

サスケはナルトの横に座り、ナルトの上半身に腕を回して抱き起こす。

自然とサスケと抱き合う形になり、ナルトはサスケの肩口に頭を埋めた。

 

「ナルト、俺はナルトが好きだ」

「だったらここに居ろよ…オレの側に居ろ…」

 

吐き出すように呟かれた言葉にサスケは首を横に振る。

 

「俺は行く」

 

サスケはそう言うとナルトの首元に口付けを落とし、そこを強く吸った。

 

「ッ…何を…」

 

キッと睨みつけると、サスケが余りにも真剣な顔をしていて…ナルトはハッと息を呑む。

サスケはナルトを抱き締めたまま素早く印を組んだ。

サスケが印を組み終わると同時に、サスケが付けた紅い印が燃える様に熱くなり、

ナルトはクッと小さく声を上げ、首元にスッと手を当てる。

 

「この印が消えるまでには帰って来る」

「お前ら兄弟の<帰って来る>は信用できねぇんだよ…」

「それでも信用しろ!次に帰ってきた時はお前の全てを頂く…その為の印だ。

俺は必ずお前のところに帰って来る」

「……」

「ナルト、お前を愛している」

 

そう言ってサスケは舞散る木の葉を残して跡形もなく消えた。

 

「兄弟揃って同じ様に消えやがって…しかも、人の話聞かねぇとこまでそっくりなんて…」

 

ナルトは小さく呟くと、諦めたようにしょうがない奴ら…と口端を少し持ち上げた。