突然ナルトの前に現れた死んだ筈の父親…

注連縄は今まで一緒に居られなかった隙間を埋める様にナルトを抱き締めて離さなかった。

口ではウザい、近寄るな等言っているナルトだが、本当はずっと両親が側に居なかった自分にとって

今は最高の幸せな時間ではないのかと心の底では思っていた。

そして幸せとはいつもそう長く続く事はないものだ…

 

 

 

 

//親愛 - OYA'AI//

 

 

 

 

 

「ナルくん…そろそろお別れしないといけない時間みたい…」

「……そっか」

「また一人ぼっちにさせちゃうね…ごめんね、ナルくん…」

「アンタが居なくてもオレにはシカたちがいるから平気」

「そっか…そうだよね…今まで僕がいなくてもナルくんは独りで暮らしてきたんだもんね…」

 

哀しそうに眉を顰めて注連縄は俯く。

ナルトは視線を逸らしたまま、ずっと窓の外を見つめていた。

本当は自分でも分かっているのだ…

行かないで…独りにしないで…本当はそう言いたい筈なのに言えない…

ナルトは苦しそうにギュッと唇をかんだ。

 

「もうオレ寝るから」

「ナルくん…お別れの挨拶してくれないの?」

「勝手に消えろ!!」

 

どうしようもない思いに歯噛みしながら、思ってもいない事を口に出してしまう。

振り返らずとも父親がどんな顔をしているのか分かってしまう…

結局ナルトは別れの言葉一つ言わず寝室の扉をバタンと閉めてしまった。

注連縄は最初こそ愛する息子の言葉にショックを受けていたが、

小さく嘆息すると、しょうがないなぁ〜と呟いてナルトの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドの中で蹲る様にして眠るナルト。

それは孤独をずっと我慢し続けてきた証拠だ。

注連縄はゆっくりとナルトに近付き顔を覗きこむ。

閉じられた瞳から流れる雫をそっと指で拭い、ナルトの額にチュッとキスを落として再び嘆息する。

 

「まったく…素直じゃないんだから…一体誰に似たんだろうね」

 

そう呟いて注連縄の気配は一瞬にして消えた。

気配がなくなると同時に眠っていた筈のナルトはうっすらと目を開ける…

 

「アンタに似たんだよ…父さん……」

 

溢れる涙はどうしようもなく流れて止まらなかった。

そして泣き疲れたナルトは静かに眠りについたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュン

 

窓から差し込む日差しにナルトは目を開けた。

 

「……朝か」

 

ナルトはベッドから這い出ると、歯を磨こうと洗面台に向かおうとした。

そしてキッチンの前で立ち止まり唖然とする。

 

「……」

 

その朝のナルトの機嫌はその時点を以って最悪になった。

真黒焦げのキッチンと目の前に置いてある食べ物だかなんだか分からない物には目を瞑ろう…

しかし…

 

「ぬあぁぁぁんで、アンタがここに居るんだよ!!お別れはどうした、お別れは!」

「ん?一晩のお別れ☆って言わなかった?」

「聞いてない…」

「いや〜ちょっと忘れ物しちゃって取りに行かなきゃならなくってさぁ〜」

「……ふざけるな!!」

 

こうして嬉しそうな笑みを浮かべたナルトと注連縄による史上最大の親子喧嘩が始まった…