「せめてあの三つ目の棺だけはなんとしても阻止せねば!!」 「フフフ…残念、阻止出来なかったみたいね…」 「拙い…全員この付近から退避じゃ!!」 「何を言っているの?!」
会話の中、ゆっくりと棺が開いていく…その中から不気味に漏れる笑い… 三代目は警戒するように身を硬くする。 開いた棺の中から眩しく輝く金色を纏った男が現れた。
零 * 悲劇 - TRAGEDY -
「三代目、お久しぶり〜」 「…久しいの…四代目よ…」 「おや〜、ここって木ノ葉の里だよねぇ?」 「そうじゃ…」 「てことは、三代目が死んだんじゃなくてぇ〜僕が呼び出されちゃったのかな?」 「そうよ…貴方は私が呼び出したの」
チロチロと舌を出して迫ってくる大蛇丸の顔に、四代目はピョンと飛び跳ね、三代目の後ろに逃げた。
「三代目…あれ何…気持ち悪〜い!!」 「失礼ね!!貴方は私が呼び出したんだから、さっさと三代目と戦うのよ!」 「え〜やだ」 「…ほら!初代や二代目だってこうやって戦う準備してるじゃない!!さぁ!」 「え〜だってぇ〜ここ木ノ葉の里なんでしょ?」 「そうよ…それがどうしたって言うの?里のことなんてすぐ忘れさせてあげるから、安心しなさい」 「ね〜三代目?(無視)ナルくんは?僕のナルく〜んvv」 「ナルトなら死の森に居る筈じゃが…」 「そっかぁ〜じゃぁ、僕ナルくんのところに行って来るね☆」 「あ…あぁ…(助かった…こやつと戦わんですんで良かった…)」
三代目はホッとした様に嘆息した。 が、大蛇丸は気が気でなかった。呼び出した四代目に逃げられては元も子もないと、 ちゃっちゃと出て行こうと結界に近づく四代目の首根っこを引っつかんだ。
「待ちなさい!」 「何?ナルくんと僕の再会を邪魔するって言うの?」
四代目から漏れる強い殺気に大蛇丸は大量の冷や汗を流す。
「僕の邪魔をお前ごときがしていいと思ってるの?」
四代目は素早く印を組み、巨大な空気の塊を作り出す。 その塊がゆるりと大蛇丸を包み込んでいき、大蛇丸を取り込んだ。
風遁 百花繚乱!!
四代目がニヤリと笑って術を発動した瞬間、空気の塊の中で大量の花弁が舞う。
いや〜〜〜ん!!マーヴェラスvv
それを気色悪そうに見つめ、四代目は踵を返す。 そして音忍たちの張った結界をいとも簡単に爆破し、嬉々として死の森へ向かって行った。
「ナルく〜ん、今行くから待っててねvv」
残された者たちはただただ呆然と、依然として大量の花弁が旋回を続けている空気球を見つめていた。
その頃ナルトは砂の我愛羅と激しく戦闘を行っていた。 が、里から物凄い勢いで迫ってくる気配に我愛羅に休戦を申し入れる。 我愛羅も不思議に思ったのだろう…すんなりと申し入れを受け入れた。 森の木々が薙ぎ倒され、時々人の叫び声も聞こえる… ザッザッザという音は今正に自分たちのすぐ近くにまで迫っていた。 ナルトと我愛羅は手を握り合い、冷や汗を流しつつ前方をジッと見詰めていた。
『一体何が来るんだ…』
草を掻き分けて現れた人物に二人は驚愕の余り、互いに顔を見合わせた。 確認するように頷き合うナルトと我愛羅にその人物はゆっくりと近づき、彼らの目の前に仁王立ちする。 ナルトと我愛羅は恐る恐る顔を上げその男を見上げると、男は嬉しそうにニンマリと笑った。
「初めまして?いや…久しぶりかな?どっちでもいいや…やあ、ナルくんvv」 『ナル…くん?』
二人は再び顔を見合わせる。 ナルトは訳が分からないという風で、フルフルと頭を振る。 そしてナルトはゆっくりと尋ねる。
「四代目火影?」 「そうだよvv」 「なんでここに居るんだよ?アンタ死んだんじゃないのか?!」 「……」 「?」 「なんて可愛くない言葉使うの!!誰なのこんな言葉教えたのは?! 僕のナルくんはもっと可愛らしい子なのにぃ!」 『……』 「ナルくんは僕のことアンタなんて呼ばないもん!パ〜パvvって呼んで、キャハって笑うんだよ!!」 「へ〜じゃあ、人違いだね」
そう言ってニッコリ微笑んだナルトに四代目は傍にあった木に凭れ掛かり、いじけポーズを取りながら泣きはじめた。
「酷いや、ナルくん…せっかく会えたのに…そんな…パパにそんな…グスッ」
だんだん見ていて哀れになってきた我愛羅はナルトに慰めに行ってやるように促すが、 ナルトはただ頑なに頭を左右に振って拒んだ。
「人を生贄にした上に、独りぼっちにして死んだくせに…今更父親ぶって出てくるんじゃねぇよ! オレやじいちゃんが今までどれだけ辛い思いをしてきたか…」 「ナルくん…」 「オレがどんなに寂しかったか分かる?」 「ごめんね…ナルくん」
四代目はいじけるのを止め、ゆっくりとナルトに近づき抱き締めた。 ナルトも恥ずかしそうに、そして嬉しそうに背中に手を回した。 ナルトの背中をポンポンと一定のリズムで叩いていると、ナルトの手が急にズルリと滑り落ちた。 それを慌てて抱き上げて、四代目は嬉しそうに微笑む。
「眠っちゃったみたいだね…疲れてたのかな?ゆっくりお休み、ナルくん」
その様子を我愛羅は羨ましそうに眺めていた。 自分は父親に暗殺されそうになることはあっても、ナルトのように抱き締めて貰うことなどなかった。 四代目はその視線に気付くと、ニコッと微笑んでおいで、と手を差し伸べる。 最初はどうしようか迷った我愛羅も、恐る恐る手を握り返す。 その手をクイッと引いて我愛羅を引き寄せ、腰に手を回すと、四代目は優しく我愛羅を抱き上げた。 流石に両腕に子供たちを抱いて立っているのも辛いため、ナルトを起こさないように気をつけながら ゆっくり木の根元に腰掛け、四代目は優しく我愛羅に話しかける。
「キミはもしかして風影の息子?」
我愛羅はコクリと頷き、表情を歪める。 そんな我愛羅の頭を四代目はワシャワシャと掻き混ぜ、驚いて顔を上げた我愛羅にニッコリと微笑む。
「てことはキミの中に砂の守鶴がいるのかな?」
我愛羅の肩がビクリと動く。
「だ〜いじょうぶ(o^∇^o)僕はそんなことでキミを傷つけたりしないよ」
訳がわからないという風に揺れている我愛羅の瞳に目を合わせる。
「キミもナルくん同様苦労してるみたいだね…里長の子供というだけでも大変だと言うのに…」 「…」 「大丈夫だよ。今は安心して眠るといい…キミが起きたらちゃんと風影に説教してあげるからねvv」
その言葉に我愛羅はゆっくりと目を閉じる。 四代目の腕の中では、何故か守鶴の恐怖もなく安心して眠ることが出来た。 眠りについた我愛羅と眠っている愛しい息子の背中を摩りながら、四代目は困った様に嘆息する。
「う〜ん…二人が起きたら僕やることいっぱいだねぇ〜とりあえず風影に説教でしょぉ〜 それからナルくんといっぱい遊んでぇ〜ああ!ナルくんの言葉遣いも直さないとね!! あとは火影に返り咲き?あ、でもそしたらナルくんといっぱい遊べなくなっちゃうよねぇ…」
四代目はこれからの生活に思いを馳せ、ニヤリと怪しげな笑みを浮かべていた。 その同時刻、里や里外のあちこちで寒気を催す人々が見られたとか… こうして木ノ葉は再び四代目火影によって守られた。 しかし、四代目火影が里に留まり続けた為に木ノ葉は様々な災難に見舞われる事となるのは、まだ誰も知らない…
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