「例えばだ…例えば今すぐ此処でオレがアンタらの首を刎ねたとする。

そしたらさぁ、誰かオレの事殺しに来るかな…どう思う?臆病者の里人さん」

 

 

 

 

//murderous intent 01//No63500

 

 

 

 

いい加減、飽きてきたところだ…このくだらない生活に。

いつものようにオレを取り囲み、オレを詰り、オレを傷つける愚かな里人。

だけどオレを殺すことが出来ないでいる弱い…弱い里人。

 

「いや…殺せないでいるのはオレの方かな?あぁ、早く殺したいな…」

 

足元に転がっているかつては人の頭部であったものを踏みつけ、クッと皮肉めいた笑いを漏らす。

 

「くだらねぇ…」

 

そう呟くと同時に、ナルトはさっきまでの氷のような笑みを消し、

それとは正反対の笑顔を作り上げると、

大きく手を振り己が最も嫌悪する者たちの元へ走った。

 

「サ〜クラちゃ〜ん!!」

「遅いわよ、ナルト!何してたのよ〜〜〜サスケくんに迷惑でしょ!!」

「え〜サスケなんてどうでもいいってばよ〜」

「なんですってぇぇぇ」

 

いつもの光景、いつものバカ騒ぎ…楽しい楽しい下忍としての生活だ。

オレの周囲を取り巻く粘々とした吐き気がするような殺気にも慣れた。

いつでも殺すことが出来るのに殺さないのは、ただの気まぐれで結んだたった一つの約束の為。

愛すべき老人の愚かな望みの為。

 

「くだらねぇよ」

 

と、殺気の持ち主がオレが現れるのを見計らい、オレの後ろに降り立つ。

スッと伸ばされた手には一本のクナイ…それはオレの頚動脈を一瞬で切り裂く事の出来る

角度で固定されている。

その男の顔には普段は見せない嬉しそうな笑みが張り付いていた。

笑みが深くなればなるほど醜くなるその顔からオレは顔を逸らす。

 

「喜べナルト!お前を殺す許可が出た。

これでもう嫌な目や怖い目に遭わなくても済むぞ。喜べ!さぁ、お前も笑え!!」

「…」

「ほら、笑うんだよっ!!」

「……」

「笑えって言ってんだろ、この狐がっ!」

 

何を言ってもピクリとも表情を動かさないナルトをカカシは勢いよく殴りつけた。

が、ナルトはその場から一歩たりとも動く事はなかった。

本来ならば遠く飛ばされ、大木に身体を打ちつけ、骨折していたであろう拳を

ナルトは心底嬉しそうな表情で握り潰していた。

何故なら、火影によるナルト抹殺命令は…ナルトの戒めが消えるということだから。

里人が自由に、何者にも縛られる事なくナルトを殺そうとする、

ならばナルトがそれを返り討ちにして殺そうが自分は口を出さない…それが約束だ。

 

「うっぎぃやぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

痛みからか恐怖からか…カカシの口から漏れた絶叫は、ナルトにとって心地よい音色であった。

 

「やっと殺せる」

 

スッと伸ばされた手には黒く光る一本の刀。

そしてナルトの周囲には三人の黒衣を纏い、面を被った忍。

カカシは最初は忍たちに目を取られていた。

何故なら、彼らは里の守護神と呼ばれるものたちだったから…

その彼らがあのナルトに跪いていたから…

しかし…次第に視線はナルトの手の中にある刀に移っていく。

 

「な…んで…お前が……お前なんかがその刀を持ってるんだ…なんでだ…答えろぉぉぉぉ!!」

 

その顔は憎悪に塗れ、醜く歪んでいた。

そして一歩、また一歩とナルトに近付いていく…まるでスローモーションだ、とナルトは思った。

ナルトまであと数歩というところで紅い珠がカカシの視界を遮る。

次の瞬間、カカシはその場に崩れ落ち、紅い珠を付けた男が徐に面を外すと同時に、

カカシの表情が凍った。

 

「お前…シカマル…」

「ナルトを傷つけるヤツは俺が全て殺してやる」

 

見下ろす視線は氷のように冷たく、見たもの全てを射殺せそうなほど強い殺気が篭っていた。

ヒッと声を上げたカカシに満足したのかナルトの側に再び跪き、ナルトは楽しそうにその横をすり抜け、

カカシの前まで歩いて行った。

 

「気分はどう?一瞬にして立場交代だね。楽しい?楽しすぎるよね、この状況」

 

 

 

 

 

 

 

里一と言われるカカシを足蹴にして笑うナルトにサスケとサクラは恐怖していた。

 

「うわぁぁぁあぁぁぁぁっぁぁあ!!お前なんかナルトじゃない…死ね、この化物!!」

「間違えないでもらいたいね…こんなにキレイな化物が何処にいるっていうの?

化物っていうのは…アイツやこの里のヤツらみたいな醜いヤツの事を言うんだよ…」

 

首筋に当てられた大きな刃は一瞬にしてサスケの首を刎ねるだろう。

チャリンと涼しげな音を奏でながら鎌に繋がる鎖がグルグルとサスケを締め付けていく。

 

「サスケくん!!やめてぇ!サスケくんが死んじゃう!!」

「サクラぁ〜アンタやっぱ忍に向いてないわ〜やめたら?」

「なっ………うそ…・・・でしょ」

 

後ろからの声に反論しようとして振り向いたサクラは一瞬にして凍った。

 

「なんでアンタが……いの…」

「なんでって言われてもねぇ〜」

「そうやって僕を見られても困るんだけど…」

 

大して困っていないようなゆったりとした口調で話しながら、

チョウジは邪魔なものを取り払おうと面に手を掛けると、躊躇いなくその素顔を晒す。

呆気に取られる7班の面々に面白そうに三人が口元を緩め、

ナルトも同じ様に笑うと、カカシに目を戻した。

 

「楽しいでしょ?びっくり箱を開いていくみたいでさ」

「……」

「もっともっと驚かせてあげるよ」

「……何を言っている…」

「例えばさぁ〜こんなのどう?オレが持ってるこの刀の持ち主はオレの父さんでした。とか」

「ふざけるなっ!!」

「此処でオレがアンタの首を刎ねたらさぁ、父さん…悲しむかな…どう思う?カカシせんせぇ〜」

「何言ってんのよ、ナルト…冗談は止めてさっさと先生離しなさいよ!」

「アンタも何やってんだよ…里一番のエリートが下忍ごときに…

ナルトなんかになんで殺されそうになってんだよ!!」

『あ〜うるさい…それ以上騒ぐと殺すぞ(わよ)(よ)?』

「まぁ、お前らそんなに殺気立つんじゃねぇよ」

「だってナルト〜こいつらうるさいんだもん」

「すぐに殺したら面白くねぇだろ?もうちょっと我慢しろよ、いの」

「はぁい…」

 

諦めたように両手を挙げると、いのは一歩後ろに下がり、

他の二人も同様に事の成り行きを見ることにした。

 

「カカシせんせ〜ってさぁ、父さんの部下だったんでしょ?

その息子に殺されそうになってる気分はどう??」

「…汚らわしい口で四代目を…先生を父さんなんて呼ぶな!それ以上呼んでみろ…」

「呼んだらなんなの?オレを殺す??ククッ…できるわけねぇだろ。

それにさぁ、オレが自分の父親を父さんと呼んで何が悪いの?」

「やめろ…化け狐の分際で……お前なんかに親など存在するわけないだろぅ?

先生にも子供は居なかった。お前はただの化け狐なんだよ!!」

「しつこいなぁ〜じゃぁ、本人に聞いてみる?」

 

そう言うと、ナルトは朱寂に耳打ちする。

 

「ちょっとさぁ、そこらへんに潜んでるゴミ殺して死体一つ用意してくんねぇ?」

「りょーかい」

 

 

 

 

 

大変遅くなってしまい…申し訳ありません……

物凄くダークな感じなんですが、こんなんでいいですかねぇ?

思いの外、長くなってしまいました…とりあえず、前編で御座います。

アンチネタは読むのは好きなんですが、書くとなると難しいですねぇ…

好きなキャラ(カカシ)を徹底的に虐めてることに微妙な違和感というか、

罪悪感を感じる…(その割にはメチャクチャやってる(汗))

とりあえず、後編へ〜