手早く手当てを済ませると、まもりはヒル魔に布団を掛け、自分も同じベッドに潜り込む。

 

「何してんだてめぇは…」

「寝るの」

「はぁぁ?!」

 

今日何度聞いたか分からないヒル魔の素っ頓狂な声に笑いながらヒル魔の方を向く。

至近距離で向かい合う目と目。

ヒル魔は未だに目を見開き何がなんだか分からない様子だ。

クスリと悪戯っ子の様に笑い、まもりはゆっくりとヒル魔に口付ける。

そして固まったままのヒル魔の耳元で囁く…

 

「私、ヒル魔くんが好きみたい」

 

 

 

 

//泣虫2//

 

 

 

 

 

翌朝、目を開けると目の前にはヒル魔の寝顔…

思わず叫びそうになるまもりの口を目を開けたヒル魔は自分の唇で素早く塞ぐ。

寝起きで混乱しているのか、まもりはまだ状況が理解できないらしい。

ゆっくり唇を離すと、少しずつ覚醒してきたのかまもりは顔を赤らめる。

 

「思い出したか?」

 

いつも通りの意地悪な笑みで尋ねれば、まもりはこくこくと頷いた。

 

「問題はこれからだな…」

「へ…?」

 

まもりが顔を上げると、ヒル魔はさっさと立ち上がりシャツを脱いでいた。

 

「何して…むがもが…」

 

手で口を押さえられたまもりはジタバタともがく。

 

「このバカ…着替えるだけでいちいち叫ぼうとするんじゃねぇ!」

 

ようやく離れた手に安堵して小さく息を吐く。

 

「今…何時?」

「9時15分前」

「大変!集合時間まであと15分しかないじゃない!!」

「おっ…おいっ!」

 

慌ててまもりはヒル魔の制止も聞かず部屋を飛び出した。

そして、扉の前を通り掛った人物を見て自分が犯したミスに気付いた。

 

『まもりさん(姉ちゃん)?!』

「え…あ…」

「まもりさん…今ヒル魔さんの部屋から…」

「えと…これは…あの…そのぉ「ミーティングだ」

「ヒル魔くん!」

「あ、ヒル魔先輩おはよーっす!」

「おはようございます」

「にしてもこんな朝早くからミーティングっすか?」

「朝早い?…てめぇら今何時だと思ってやがる?いっつも部活は6時からじゃねぇか!」

「ヒィィィ…そういえばそうっすね。別に早くないっすね…(冷汗)」

「わかったらさっさと行きやがれ!!てめぇもだ、糞マネ!さっさと部屋に戻って着替えて来い」

『はいぃぃ!』

「わかってるわよ!」

 

掛けて行くまもりと部屋に入るヒル魔…二人の顔に笑顔が浮かんでいた事に気付いたものはいなかった。

だが、その二人を見比べながら不思議そうに首を傾げる男が一人…

 

「にしても、まもり姉ちゃん…昨日と同じ格好だったような…」

「そういえば…」

『まさか…そんなわけないよね(よな)…ハハハ』

 

朝のベガスに乾いた笑いが木霊していた。