Misfortune // 01*The Client

 

「ハァ…」

 

溜息とも聞こえる声を出しながら黒い煙を吐く。

グリグリとタバコを足でもみ消すと目の前に続く階段を

真っ直ぐに見上げ、一歩一歩足を進める。

 

「おい、万事屋…」

 

扉を開けようと手を掛けた瞬間…

 

「だから家賃はねぇって言ってんだろ!!」

 

土方は目的の人物に放たれた蹴りによって

扉ごと吹っ飛ばされた。

 

「うおぉい!なにしやがんだ、てめぇ!!!(`Д´)」

「ああ?!おお、大串くんじゃないかぁ〜悪い悪い。じゃ」

 

軽く手を挙げて扉を閉めようとするその家の住人の腕を

慌てて捕まえる。

 

「待て」

「なに?何か用?っていうか、聞きたくないので帰ってください」

「はぁ?!っつーか、てめぇ人の話聞けよ!」

「…だ、大体あれはだなぁ…その、あれだよ、あれ(;゜∇゜)」

「……またなんかやったのか?よ〜く話してみろや、こらぁ!」

「だからあれは、そう!事故だったんだよ、事故!!………」

「……」

「…って、え?( ̄△ ̄;)違うの??あれで来たんじゃねぇの?

だったら何しに来たんだよ、このやろぉぉ!!」

「だからなんで逆切れなんだよっっ!!…まぁ、いい。

ちょっと中に入れろ」

「は?なんで入ってくんの?!お家改め?!

っていうか不法侵入で訴えるよ?」

「俺は客だ。客も入れねぇのかてめぇは?!」

「はぁ?客?!」

 

 

 

とりあえず、しぶしぶ突然の客--土方を部屋に通すと、

銀時は一応客なので茶を出してやり、正面に腰を下ろす。

 

「で、用件はなんだよ?」

「……」

 

--なんか、思い詰めたような顔しやがって…

--しかも客だと?!こういう時の依頼はろくなことがねぇ…

--さっさと断って帰しちまおぅ!

 

「用がねぇなら、帰れよ。っつーか、俺面倒な事はやんねぇよ?」

「…今日は、チャイナ娘たちはいねぇのか?」

「あ?あぁ〜今日は新八の家に泊まりに行くっつって

出かけちまったよ」

「そうか…」

 

--…………マジで何しに来たんですか、このやろぉ・・・

--なんか嫌な予感するんだよな…マジで早く帰ってくれよ…

 

ドンッ

 

「……何これ」

「依頼金だ」

 

土方はそう言って一度机の上に置いた袋を銀時の前に突き出す。

 

「万事屋…これで俺を抱いてくれ」

 

--そらみろ。やっぱりろくなことじゃねぇ…

--っていうかなに言ってんだこいつ…

 

「オイオイ…( ̄Д ̄;;) お前頭に虫でも湧いてんじゃねぇのか?

っていうか、自分で何言ってるかわかってんの?」

「わかってるに決まってんだろ。…それともナニか?

俺じゃ不満かよ、万事屋さんよ?」

「いやいやいや…不満とか言う以前の問題じゃ…」

「ヤってみなきゃわかんねぇだろうが」

「…いや、やってみなきゃってねぇ…

そもそも俺、男なんですけど…」

「だからなんだ。別にヤらせろって言ってる訳じゃねぇだろ?

まぁ、このさいどっちでもいいか…」

「いや、よくないから。なぁ、土方くんよ…よぉく考えろ?

お前男だよな?」

「たりめぇだ」

「よし!で、俺も男だよな?」

「なんだ、てめぇ女だったのか?なら尚更OKじゃねぇか」

「んなわけあるかぁああぁあぁぁぁあっ!!

っつーか、この流れでそれはねぇだろっ?!いいか?よく聞け。

お前は男で俺も男だ。それはわかってんだよな」

「だからわかってるっつってんだろうがっ!!」

「まぁ聞け。普通そういうことはカワイイネェちゃんとやることで

ヤロー同士でやることじゃねぇよな?」

「普通はな」

「つーことで、俺にはそっちの趣味はないので帰ってください」

「俺だってねぇよ!」

「じゃぁ、よかったじゃねぇか!

さっさとこの金持ってとっととお引取りください」

「ちょ…ちょっと待て!」

 

大金を非常に惜しくは思いつつも土方に持たせ

必死に追い返そうとする銀時を土方はくるっと反転して

力任せに押し倒した。

一瞬目の前が真白になった銀時は

次の瞬間目前に飛び込んだ様子に目を剥いた。

それよりも何よりも唇に触れる柔らかくて生暖かいモノに

背筋からぞぞぞ…と寒気が襲ってきた。

 

「………おぃ……ちょ…ん………」

 

抗議の言葉はスルリと侵入を果たした土方の舌に絡め取られた。

充分に口内を蹂躙された頃、漸く唇が離れる。

銀時が土方の顔を恨めしげに睨み上げると、

当の土方は強いショックを受けたような表情をしていた。

 

「…なっ…なんで人の唇奪っておきながら、

てめぇがそんな顔しちゃってるわけ?!」

「……」

「おいっ!なんか言えコラ!!つーか早く俺の上からどけっ!

って……んむ…はぁっ……ちょ…待てって…離っ…ん…」

 

ショックな顔をしておきながら、銀時の唇に口付ける。

やめろ!と一生懸命ドンドンと土方の胸を叩くと、

わかってくれたのか唇が離れる。

が、安心したのも束の間…今度はぎゅっと抱き締められた。

わけがわからん。とばかりに銀時が嘆息すると、

それに土方の身体がビクリと波打つ。

ごくりと唾を飲み込む音が、妙に銀時の耳に響いた。

落ち着いてみれば、土方の身体は小刻みに震えていて…

 

--何だコイツ…どっかおかしいんじゃねぇのか?

 

不審に思った銀時はとりあえず腕の中から抜け出そうとするが

一向に抜け出せず、しょうがなく言葉を発することにした。

それは決して厳しいものではなく、寧ろ憐れむような優しい声で。

 

「おい…お前どっかおかしいんじゃねぇの?

いい女紹介しようか?もしくは男でも構わねぇけど…」

「…お前が…」

「あぁ?」

「お前に抱かれてぇ…」

「まだ言ってやがんのか?ったく、俺はそっちの趣味はねぇし

っつーか男相手に勃たねぇよ。あぁ〜そら見ろ…

俺のマグナムがこんなにしょぼくれちまって…って…あれっ?

ううおぉぉおぉおおぉおおおいっっ!なにやってんだてめぇ!!」

 

銀時が優しく語っているのをよそに、

いつの間にか銀時から離れた土方はちゃっちゃと銀時のズボンを

器用に脱がし終えていた。

 

「っていうかさぁ…キミ、人のナニで何やってるわけ?

何知らないうちに剥いちゃってんの?

マジシャンですかーアンタは」

「勃たねぇなら、勃たせてやる」

「へ?」

 

ニヤリと少し余裕なさげに笑うと、躊躇いなく銀時を口に含んだ。

 

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