「禿げ三蔵、覚悟しろ!!」

「またてめぇか…ホレ」

 

三蔵は李琳にいつも通りどこに持っていたのか不思議な饅頭を差し出す。

お決まりで李琳は三蔵の肩に跨り美味そうに饅頭に齧り付いた。

既に恒例となった紅孩児たちの襲撃…三蔵の相手はいつも李琳だ。

いい加減同じやり取りに飽きてきた三蔵はちょっと考える。

ふと何かを思いついた三蔵は李琳を肩に乗せたまま、森の奥へ走り去った。

 

 

 

 

 

* 或る日の三蔵さん *

 

 

 

 

 

「禿げ三蔵どこに行くんだ?」

「ああ?!知らねぇよ」

「変な事言う三蔵だな…それよりおかわりは?」

 

不思議そうに首を傾げつつも、おかわりを要求するところは流石である。

いくつ用意されているのか…三蔵は徐に饅頭を取り出し、李琳に与えた。

 

「そろそろだな…」

 

どんどん奥へ突き進む三蔵たちの目の前に一人の男が立ちはだかる。

自他共に認めるシスコン男、紅孩児である。

 

「李琳をどこへ連れて行く気だ…」

「あ〜お兄ちゃんvv」

「李琳こっちへ来い!!」

「は〜い(*´∇`*)」

 

李琳は嬉しそうに兄に抱きつき、それを紅孩児はニンマリと鼻の下を伸ばし抱き返す。

そこに現れたもう一つの影…三蔵の呼び寄せたかった目的の人物である。

 

「紅孩児!オレとの戦い放ってなにやってんだよ!!」

「妹の貞操の危機に暢気になど戦ってられるか!」

『貞操の危機?!…このシスコンめ…』

 

そしてこのユニゾンによって、やっと目的の人物−悟空は三蔵に気付く。

 

「あれぇ?三蔵じゃん…」

「気付くのが遅ぇよ、バカ猿!」

 

三蔵はゆっくりと近付きギュッと抱き締める。

 

『え゛?!』

「さ…三蔵?」

「なんだ?」

「ええ〜っと…紅孩児たちが居るんだけど…」

「それがどうした」

「だから紅孩児たち居るのに…恥ずかしいじゃん!!」

「フン…あっちのシスコンよりは恥ずかしくねぇよ」

「なんだと?!」

 

可愛い妹を抱っこしてヨシヨシしながら凄む紅孩児をフンと三蔵は鼻で笑った。

 

「お兄ちゃん恥ずかしいの?」

「そんなことないぞ〜恥ずかしいのは男同士であんなことしてるあの二人だ」

 

人格が変わってしまった紅孩児を悟空は不思議そうに見遣りながら、ボソッと呟く。

 

「やっぱり男同士は変だよな…」

「変じゃない!!あっちなんて血が繋がってるんだぞ!しかも歳なんて十歳以上違うんだぞ!

俺たちは確かにちょっと変かもしれないが、あっちは犯罪だ、犯罪!!」

「お兄ちゃん?犯罪って何だ??」

「気にするな、李琳。あっちの歳の差なんて何百歳なんだから…犯罪と言うなら奴らこそ犯罪だ!」

「いいんだよ!こっちは見た目で問題ねぇんだから!!」

「フン!それならこっちの方が問題ないぞ。なにせ妖怪同士だからな…」

「クッ…愛さえあれば種族の違いなんて関係ねぇんだよ!血が繋がってるよりマシだ!」

 

いつの間にか悟空と李琳を挟んだ口喧嘩に発展していた。

困ったように悟空と李琳は目を見合わせる。

 

『三蔵(お兄ちゃん)、もうやめて!!』

 

ウルウルした目で見詰める愛する者たちに勝てるわけもなく…喧嘩は一瞬にして終結した。

 

『愛があればなんでも大丈夫なんでしょ?ね、三蔵(お兄ちゃん)(*´∇`*)』

『そうだな…』

「悪かったな…」

「俺の方こそ剥きになってすまなかった…」

『よくできました(*´∇`*)』

 

悟空は三蔵の、李琳は紅孩児の頭をヨシヨシと撫で撫でした。

その仕草に二人とも鼻を伸ばし、互いに同類である事を認め合うように顔を見合わせ頷いた。

さっきまでの争いなど嘘のようにその場には和やかな雰囲気が流れていた。

 

「悟空こっちに来い」

 

三蔵は目的を達する為に悟空を呼び寄せる。

 

「ん?何だよ三蔵??」

 

悟空を自分の膝の上に座らせると、ギュッと抱き締める。

 

「三蔵?」

「最近こうして抱くことが出来なかったからな…」

「三蔵、欲求不満?」

「まあそんなところだ…」

「もしかして、この為にこんなとこまで走ってきたの?」

「あぁ…李琳を連れ去れば紅孩児が追ってくると思ったからな…戦ってたお前も来ると思ってな」

「ったく…ま、偶にはこういうのもいいよね…」

「だろう?」

 

そう言って自分を見詰めてくる三蔵の熱い視線に悟空はビクッと肩を震わせる。

 

「ダメだって三蔵!」

「構わんさ…」

「三蔵が良くてもオレはダメだって!!」

 

三蔵の胸を一生懸命押して逃れようとするが、欲求不満の三蔵にそれが通じるわけもなく…

結局悟空は三蔵の為すがままになってしまう。

 

「ン…」

「悟空…」

「うわ〜禿げ三蔵、悟空とチュウしてらぁ〜!」

 

李琳は面白そうに見詰めていた。

そんな妹をジッと見詰める兄…

 

「李琳〜お兄ちゃんとしよっか〜(=´▽`=)」

「やだ」

「李琳〜〜〜(_TдT)」

 

李琳の即答に紅孩児はあえなく撃沈した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長いキスを終えた三蔵は満足げに笑いながら悟空を抱き締める。

悟空は力が抜けたのか三蔵の胸の中でホケーッとしていた。

 

「…三蔵のバカ…もう当分三蔵とチュウしないから」

「悟空?!」

 

三蔵は悟空の怒りを買ってしまったらしい…

それから数週間、三蔵はお預けを食らった。

 

--次は別の手を考えなくては…

 

と三蔵が新たな手を考え始めたのは言うまでも無い。