「似ている…」 「似ているな…」 「あの眼差し…」 「この里には一人しか存在しなかったあの髪の色…」
里ではある噂が実しやかに囁かれていた。 その噂は…
<うずまきナルトが本当は四代目火影の息子である>
というもの。 実際何の根拠もないわけではない。 18歳になったナルトは身長も伸び、顔立ちもどこか大人びてきた。 その顔が恐ろしいほど四代目に似ているのだ。 それに加えて、風に揺れる金色の美しい髪。 その色は、四代目火影とナルト以外はどこにも存在しない色だった。
零 * 血筋 - BLOOD -
里人の多くはその事実に以前から気付いてた…だが憎しみの為、それを記憶の中から消し去ったのだ。 しかしこうもはっきりと目に見えてしまうと、それから目を逸らすことの出来なくなる。 多くの者は助けを求めるように、そしてNO!と否定してもらえるように綱手の元に訪れた。
「綱手様!!」 「何だ?(もうこれで何組目だ…)」 「あの…その……」 「はっきり言わんか!!」
バキッ
「アッ…」 「綱手様、里の備品を破壊するのは止めて下さいと前にも言ったと思いますが…」 「サクラ?!…スマン…」 「何度かノックしたんですけど、返事がないので入って来てしまいました」 「構わん…別にたいしたことではない」 「そうですか?それでは、これ報告書です」 「ああ、いつもすまないね。明日は久々の休みだろう?ゆっくり休むといい」 「はい、ありがとうございます。ではお邪魔みたいなので失礼します」
サクラは丁寧にお辞儀をしてその場を去ろうとする。 が、扉を開けたところで立ち止まり、里人の話に耳を傾ける。 何故なら彼らの口から自分のよく知った名前が聞こえてきたからだ。
「あの…うずまきナルトは四代目と何か関係があるのですか?」 「関係ねぇ…まだお前たちが知るべき時じゃないよ」 「やはり…」 『うずまきナルトは四代目の息子なんですね?!』 「さあな…だが、もしそうであればお前たちはどうするというんだ? 九尾がナルトの中に居ることは変わらんぞ?」 『う…それは…』 「九尾の力を完璧に使いこなしているとはいえ、奴の脅威や九尾の存在が完全に消えたわけではない。 しかし、それが四代目の息子だとわかった途端今までのことを棚に上げ、掌を返してナルトに優しくするか?」 『……』 「ふざけるな…」
綱手は忌々しげに小さく呟いた。 里人たちは身体を丸め、口々に呟きながら部屋を出て行く。
「俺たちは今までなんてことをして来たんだろう…」 「あの時、確かに四代目の奥方は身籠っておられた…」 「赤子が産まれる前に子供諸共亡くなられたと三代目は仰っていたが…」 「そもそも、あの四代目が他人の子供を器として使う筈がないではないか…」 「なんてことだ…」 「あの子供に封印されなければ、里は壊滅していた。 あの子が里を守る為に九尾の器になってくれたというのに、俺たちは…」 「里の英雄になんてことを…」
その様子を眺めていた綱手はフンと鼻で笑う。
「気付くのが遅いんだよ…」
その頃、話を聞いていたサクラは全速力で里を駆け抜けていた。
「ナルトが四代目の息子?!私なんかより遥かに強いってことは知ってたけど… まさかこんなことって…つまりナルトは火影になれる可能性バッチリあるってことじゃないの!! なんてったって四代目火影の正統な跡継ぎなんだもん…実力も血筋も完璧じゃない! あ〜早くいのたちに報告したい!きっと喜ぶわ!!」
「そろそろ頃合だね」
火影の執務室には妖しげな笑いが溢れていた。
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