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雪の舞散る中、木々を渡る忍が二人…
「吹雪いてきたな…急ぐぞ、カカシ」 「はい!!」
任務は至って簡単だった。 雪の国に訪問中のとある大名の暗殺及び大名が雇った抜け忍集団の即時抹消。 暗殺はカカシに任せ、抜け忍たちの相手は自分が請け負った。 しかし、その帰り道…二人は激しい吹雪に巻き込まれてしまった。 前も見えない程の激しい吹雪に、自分の五感を最大限に研ぎ澄ませながら先に進んでいく。 目の前には広く開けた大地…間もなく見える筈だった街の明かりは一向に見えない。 そして二人が一歩踏み出した先…そこは断崖絶壁だった。
//壱−カカナルシリアスver.//
先に気付いたのはカカシだった。 トクントクンと脈打つ心臓の音に目を開ければ、目前には断崖絶壁が広がる。 体を起こそうとして自分が誰かに抱き締められている事に気付く。 それは紛れもなく一緒に任務に出た暗部を統括する長、総隊長白狐で… カカシの顔から一気に血の気が引いていく… 慌てて白狐の頬をペチペチと叩いた。
「総隊長!…白狐…白狐!!」
クッと小さな声を漏らすと、白狐は頭を振りながら起き上がった。
「カカシ、大丈夫か?」 「俺のことなんかより、アンタは大丈夫なのか!!」
白狐の方が自分を庇って明らかに重傷な筈なのに、それでも他人を心配する白狐 に尊敬を通り越して、少し呆れた。 カカシは立ち上がると白狐が立ち上がるのを手伝おうと手を差し出す。 が、その手は呆気なく無視され、白狐は一人で立ち上がると一点を指差した。 その方向に目をやると一軒の古びた山小屋があった。
「此処がどこかも分からない今、オレたちのすべき事は助けを待つ事だ」 「助け?」 「もう救援信号は出したから問題ない」
そう言って白狐は自分の耳にぶら下がる金色の珠をキュッと握り締めた。 そんな白狐に目を戻した時、カカシはその後方に紅い色素が見えた気がした。 既に雪で隠されかけてはいるが、それは紛れもなく血が流れた証拠だった。
「白狐、アンタ本当に怪我してないのか?」 「していない」
はっきりとそう述べた白狐にカカシは追求することなく山小屋へ向かった。
山小屋はずっと使われていなかったようで、薪すら残っていなかったが、 風を凌ぐことができれば上出来だ。 あとは二人寄り添って助けを待てばいい… そんなカカシの考えは見事に裏切られ、白狐はカカシと真反対の壁に腰を 下ろした。 それからどのくらい時間が経ったのか…何の会話もなく、激しい風の吹き付ける 音だけが響いていた。 流石に身体が氷の様に冷え切って、耐え切れなくなったカカシは口を開く。
「そっちに行ってもいいですか?」 「……」
返事は返ってこなかった。 小屋の中は電灯もなく暗い…ただなんとなく感覚で白狐が蹲っているのが分かる。
「アンタも寒いでしょ?こういう時はくっついてた方がいいですよ」 「……」
問いかけても問いかけても返事は返ってこない。 次第にまさか眠ってしまったのでは…とカカシの中に焦りが生まれる。 既に感覚を失いかけている足に力を入れて立ち上がると、カカシは白狐に向かって 歩いて行く…と、小さな声が聞こえた。
「…え?」 「…る…な…」 「何言って…」 「来るな!」
ハッキリと聞こえたその声はいつもの白狐の声ではなかった。 どこか聞き覚えのある…少し高めの、子供の…声… その声にカカシは聞き覚えがあった。 慌てて白狐の元へ駆け寄ると、そこには今まで見ていた二十歳くらいの青年では なく、十二、三歳の少年が居た。 少年の被っている面から、その少年が間違いなく白狐であることを物語っている。 その面にゆるりと手を掛けようとして、その手は叩き落とされた。
「触るな!」 「来るなの次は触るなか…別に取って喰おうってんじゃないんですけどね」
と、ふとさっき一瞬だけ触れた白狐の手が酷く熱を帯びていた事に気付く。 そういえば、さっきから白狐の息遣いが荒い気がする… 慌てて抱きすくめた身体は通常の体温では考えられないほど熱かった。
「はな…せ…」 「それどころじゃないでしょ?面、取るよ?」
大人の力に子供が敵う筈もなく、呆気なく面は取り外された。 勿論その下には予想していた子供の顔があるのだが、それでも驚きは隠せない。
「ナルト…」 「驚いた?オレの事殺す?今ならチャンスだよ…オレ弱ってるから」 「何言ってんだ、お前は…」
カカシはギュッと抱き締める腕の力を強めた。 既に反抗する事すら出来なくなっているナルトの息は荒くなるばかり… カカシはナルトを離すと、ナルトの服を素早く脱がし、自分も脱いだ。
「何…してんだよ」 「知らないの?」
クスリと笑うとカカシはナルトの腕を掴み、自分の胸の中へと引き寄せた。
「あったかい…」 「だろ?俺がナルトの熱を吸い取ってやるよ。朝には楽になる」 「そっか…ありがと、カカシ…」 「出来れば御礼に一回させてくれるといいんだけどな…熱も一気に下がるぞ?」 「何をだ…」 「こういうことを…」
カカシはナルトの唇に自分の唇を寄せながら身体の中心を摺り寄せた。
「///てめぇは…不謹慎だと思わねぇのかよ…」 「そうは思うけど身体がな〜俺、前からお前のこと好きだったし」 「好きな奴のこと今まで気付かなかったなんて間抜けだな」
フン、と嘲るように鼻で笑ってやるが、カカシはクスッと笑ってナルトの耳元に 唇を寄せる。
「いいんだよ、これからよ〜く知るんだから」 「勝手にしろ…これで熱が引かなかったらどうなるか覚悟が出来てるんならな」 「そんなものナルトが白狐だって分かった時点で覚悟してるよ」
朝方、すっかり引いた熱に驚きながらもナルトは身体に走る痛みにかすかな 苛立ちを覚え、思いっきりカカシを殴りつけて起こした。 さっさと服を着ると印を組み変化し、狐の面をつける。 頭に出来たこぶをさすりながらカカシが服を着た頃、よく見知った気配が小屋に 近付いてきた。
『白狐!!』 「遅い!!救出までにこんなに時間が掛かってどうする?再度鍛えなおしだな」
そう言い残して白狐は太陽の光を反射してキラキラと輝く雪原へ消えた。 その頬はほんのりと赤く染まっていたのだが、誰一人気付くことなど無く… 取り残された四神三人+カカシの四人はポカーンと白狐の消えた方を見つめていた。
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