「アスマ」

「なんだ、カカシ」

「さっきから気持ち悪いんだけど」

「どっか調子でも悪いのか?」

「……そうじゃなくて」

 

どこか不機嫌そうにカカシは愛読書に注いでいた視線をアスマに移した。

 

「お前の顔」

「は?」

「さっきからニヤニヤと…気持ち悪いったらありゃしない」

「おっと、顔に出てたか…悪ぃ悪ぃ。にしても、気持ち悪いはないだろ…」

「気持ち悪いんだから仕方ないでしょ。で、何そんなイイ事あったのさ?」

「…いや、これから任務なんだよ」

「ハァ?!任務に行くのが嬉しくて笑ってたの?!頭打ったか、熱でもあるの?」

「……ひでぇな…別になんだっていいだろ、俺の勝手だ」

 

 

 

 

//隣//No.44500

 

 

 

 

「おい、何してる…行くぞ」

 

相変わらず気配もなく降り立った一人の暗部。

今日、俺は初めてこいつと任務に行く。

この暗部の名前は白狐…恐れ多くも暗部総隊長様だ。

しかし、驚くことにその正体は古くからの悪友の教え子だった…

ひょんなことからそれを知って以来、ずっと希望していた任務…それが今日なのだ。

 

「お、おう///」

「……やっぱり気持ち悪い」

「うるせぇっ、カカシ」

「オレも同感だな…」

「お前まで…」

 

俺はただ嬉しくて笑っただけなのに…

 

「冗談だ。行くぞ、アスマ」

「えっ…」

 

初めて名前を呼び捨てられた…数年来吹いたことのない新鮮な風が俺の身体を駆け巡る。

 

「なにか問題でもあるか?」

「いや、何もない」

 

慌てて否定した俺に、クスリと笑みを零して白狐は踵を返す。

俺はその後ろに続いた。

と、その更に後方から聞こえた声に俺は不覚にも反応してしまった。

 

「ナルト…?」

「な、そんなわけねぇだろ」

「ふ〜ん」

 

なんでナルトだと思ったんだろ…と頭を掻いているカカシを置いて俺は白狐の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

「危うくバレるところだった…」

 

フゥ…と安堵の溜息を吐く俺の横で白狐−ナルトは面白そうに笑った。

 

「別に俺はバレてもいいけどな。その方がいろいろ楽になるし」

「俺はイヤだ!!」

 

思わず叫んでしまった…

そんな俺にナルトが不思議そうに首を傾げる。

 

「なんで?」

「あ…え…これはだな…」

「シッ…黙れ」

 

説明しようとした唇はナルトの掌で塞がれた。

触れた部分からナルトの体温が流れ込む…俺よりも若干高い子供の体温。

ペロリと舌を出してナルトの掌を舐めてみた。

ほんのり甘い気がした…

 

「な、なにしやがる…」

「味見」

「変態か、てめぇは…それより、来たぞ」

「おう」

 

とりあえず、さっきの話は突っ込まれずにすんだらしい。

敵さんに感謝しねぇと。

感謝の意を込めて、痛くないようにさっさと殺してやるか。

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、なんで?」

「はぁっ?!」

「だから、さっきのなんで?」

「え〜っと…白狐さん?」

「カカシにバレたらなんでイヤなわけ?」

 

すいません…今、戦闘中なんですが…

敵をバッタバッタと愛刀−黒刃で切り倒しながらも、ナルトの視線は俺に注がれている。

俺の方を向いていようと、話をしていようとナルトの動きには一切乱れはない。

俺に関して言えば、ナルトのように視線を向けることなんてできず、

敵を見ながら言葉だけナルトに向けて発しているだけだ。

 

「なんで?」

 

この調子だと、俺が答えるまで引く気はないらしい。

その間にもナルトの周囲には敵の残骸が散っていく。

赤い血飛沫は全てナルトを裂けるように飛び散る…それは全てナルトの計算の上なのだが…

ナルトは息一つ乱さず、ただ俺を凝視している。

 

「集中してやれよ、敵に失礼だろ?」

「だって雑魚だもん、必要ないだろ?」

「……これが雑魚かよ…俺はいっぱいいっぱいなんだけどな」

 

こんなにも自分とナルトに差があるとは思わなかった…その差を思い知らされる。

 

「ったく、なんでそうはぐらかすかね…そんなに言いたくないわけ?」

「…いや、そういうわけでは…」

「それとも、言えないのはオレが狐だから?」

 

なんで、俺が理由を言えないことと九尾が関係あるんだろう…

俺が口を噤んでいると、チッと舌打ちしてナルトは黒刃を解放した。

ナルトの組む印にあわせて黒刃が分裂を始める。

一瞬にして俺とナルトの周囲を囲んだ黒刃の欠片が次々に敵を土へと還していった。

 

「初めて見た…これが…総隊長、白狐……」

「オレが怖くなった?」

 

ナルトは敵の消滅と同時に面を外すと、俺をジッと見つめる。

だから一緒に任務なんて来たくなかったんだ…そう呟くナルトのナルトの瞳は不安に揺れていた。

そんなナルトの頭をクシャリと撫でて、怖くない。とはっきり伝える。

それでも表情の変わらないナルトを片腕でヒョイと持ち上げ、肩車してやる。

一瞬驚いた表情を見せるが、すぐに安心したように笑った。

 

「太い腕だな」

「お前なんか片腕だけで抱けるぞ」

「小さいって言いたいのか?オレだってすぐ大きくなる」

「だろうな。こんなのできるのも今だけだ…」

「なんか…父さんみたいだ」

「おいおい、父さんかよ…」

「ま、アスマは父さんみたいに細くねぇし、美人じゃねぇけどな」

 

ニシシ…と声を出して笑う。

俺だけに見せてくれるナルトの無邪気な笑顔。

いつもは氷のようにトゲトゲして、どこか全てを悟りきっている子供が、

唯一見せる子供らしい顔。

俺はふっと笑いながらそうだな、と肯定した。

 

「確かに、見た目的には親子みたいなもんだよな」

 

イコール、俺とナルトに恋愛関係ないんて存在する筈はないということ。

自分で自身に止めを刺してやる。

子供相手に不埒な思いを抱いている自分に対する戒め。

 

「なんだよ・・・、そんなにオレの父さんがいいのか?」

「いや、別にそういうわけじゃねぇが…」

「オレ的にはさぁ、アスマは父さんじゃなくて…ずっとオレの隣歩いてろよ///」

 

ナルトはいつも突然俺の欲しい言葉をくれる。

だからいつまで経っても諦められないんだよ…わかってるのか、ナルト?

自分の頬を挟むナルトの両足をギュッと押さえる。

 

「お前も俺だけの隣を歩いてろ。カカシになんか歩かせんじゃねぇ」

「わかった」

 

一言だけ呟いて、ナルトは俺の頭を後ろからギュッと抱き締めて笑った。

あぁ…やっぱりこいつには敵わねぇな…

ガラにもなく俺は幸せだった。

 

 

 

 

 

 

アスナル…何気に初めて?

<シリアス+甘め>になってますかねぇ…

アスマの気持ちになんとなく気付いていて、何も言ってくれないことに不安を抱いているナルトと

年齢とか性別とか当たり前のことを気にして何も出来ないでいるアスマさんです。

微妙にアスマさん嫉妬中(笑)

気に入って頂ければ幸いでございますvv

44500Hitsホントにありがとうございましたm(_ _"m)

From ARKY_______________