「遅い。」

「なんだ…」

 

中期任務から帰った俺が最初に聞いたナルトの声はこの一言だった。

己の腕で頭を包むように伏せているナルトの顔を見ることはできない。

暫しの沈黙の後、ボソリとナルトが呟く。

 

「今日は一体何日だ?」

「また、時間もわからないほど寝ていたのか、ナルト」

「オレの質問に答えろ。今日は何日だ?」

 

明らかに機嫌の悪いナルトの声に、四神と呼ばれる自分ですらビクリと肩を震わせる。

 

「七月十三日…」

「……十日だ。」

「?…だから今日は十三日だと…」

「違う…十日経ったんだ」

 

 

 

 

//BIRTHDAY 0703//

 

 

 

 

見ようによっては不貞腐れているようにも見える。

ナルトの傍に行って初めて気が付いた…ナルトの腕の中に埋もれている中くらいの箱。

 

「ナルト…お前、俺の誕生日を覚えていたんだな…」

「当たり前だろ?」

「…ありがとう…俺のこと待っていてくれたんだよな?」

「十日も待たせやがって…」

「すまん…」

「いいょ、別に」

 

帰ってきて初めてナルトがニコリと笑った。

 

「さてと、んじゃパーティーするか!」

「そうだな…………ちょっとマテ。」

「ん?」

 

パーティーをすると言ったナルトが今まさに開けようとしている箱…

それはさっきまでナルトの腕の中にあった箱だ。

そして俺の目が確かならば、その表面にはハッキリと明確にこう記載されていた…

 

賞味期限:本日中にお召し上がりください。

保存方法:冷蔵保存。

 

--本日っていつだ?!ナルトはいつこの箱の中の物体を買ってきた…良く考えろ、俺!!

 

俺が悩んでいる隙に、ナルトはお構いなしに箱を開けていた…

あの箱を…

 

カビるんるん大量発生注意報発令真っ最中な、あのケーキが入った箱を…

 

「よし!準備完了vvパーティーを始めようか、ネジ…クク」

 

--待たされたことをそんなに怒っているのか、ナルト?!それとも日頃の恨み?!

 

「……俺、死んだ…」

「ククク…」

 

ナルトにア〜ンしてもらうのは嬉しいが、

刻一刻と近付く微妙な色のなんだかわからない物体が恐ろしくて、それどころじゃない…

 

「ハイ、ネジ」

 

--こういうのは、普通シカマルの役だろ…何故俺が…

 

「ほら、口開けろ?」

 

可愛らしい笑顔が悪魔の笑みに見えて仕方がない…

ああ…神様……どーかコレを食っても死にませんように……

 

「誕生日おめでとう、ネジ」

「ありがとう…ナルト」

 

精一杯、平常を装って言った礼が妙に悲しい…

思い切って大きく口を開けると、一気にケーキを噛み砕いた。

 

--ん……?

 

--あれ……?

 

「あれ……これ…美味い……そもそも、カビじゃない…?」

「プッ……ったりめーだろ。ナルトがお前のために作ったもんが不味いわけないだろ?」

「……ナルトが何も知らずに十日も待つわけがないだろう…

そもそも、先の任務をお前に与えたのはナルト自身だ…」

「……シカマルにシノ…お前たちいつから居た?」

「ずーっと最初からに決まってるだろ?…ククッ…にしてもあの食う前のネジの顔…マジ最高…」

「確かに…あんなネジはなかなか見れんな…」

 

腹を抱えて笑うシカマルたちにネジは呆然とするしかなかった。

そんなネジの肩に後ろから腕を回して隣に立ったナルトは、面白そうに笑いながら囁く。

 

「たまにはドキドキも必要だろ?最近、ドキドキがなくて詰まらないって言ってたネジに

オレからのプレゼントvvどーだった、ドッキリカビケーキは?」

「……ハァ…そういう意味のドキドキではないんだがな…伝わらないものだな…」

「ん?」

「…美味かったよ…ありがとう、ナルト」

「お前、俺たちにも感謝しろよ〜?」

「パーティー会場の設置…大変だったんだぞ……」

 

シカマルとシノに連れられて入った部屋には山盛りの料理とたくさんの仲間たちが居た。

 

誕生日おめでとう、ネジ!!

「ありがとう」

 

ナルト以外のものには滅多に言う事はない言葉…

素直に言う事ができたその言葉に自分でも驚きながら、

それでもたまにはこんなのも悪くない…とネジは嬉しそうに微笑んだ。