あの日…僕らは見てはいけないものを見てしまった… あんなにうれしそうにあんなことをする悪魔と、あんなに幸せそうにもっと…と悪魔に強請る天使を あの日…僕らは偶然目にしてしまった。 いや、これは必然だったのかもしれない…
高級チョコは愛の味。
「ジャ〜ン!!」 「うぇっ?!」 「なに吃驚してんのさ」 「え、だって…まさかくれると思わなかったから…」 「そんなわけないでしょ。ハイ、受け取ってよ。ほら」 「うん///ありがと、セナ」
一生懸命作ってくれたバレンタインチョコのお返しに僕が選んだのは小さなハートが 二つくっついた可愛らしいリング。 身に付けると、動くたびに二つのハートがさわやかな音を奏でるなんて鈴音にピッタリだと思った。 ちょっと不自然に指輪のサイズなんて聞いたから、絶対バレてると思ってたんだけど… 真白な小さな箱に架けられたピンク色のリボンを開き、鈴音は恐る恐る開ける。 と、可愛らしく箱の中央に収まっていたそれを見て、鈴音がうれしそうに微笑む。 その瞬間…あぁ、これを選んでよかったなぁ〜となんだか自分でも嬉しくなった。
「セナ、ダイスキ…///」 「えっと…僕も、かな」 「かな…ってどういう意味よ!!」 「あわあわわわわ…え〜っと、これはただの照れ隠しで!!///」 「な〜んてね。セナのことなんてな〜んでもわかってるよ!」 「指輪のこと気付かなかったのに?」 「……セナのバカ…」 「うわ〜うそうそ!!さっきのなしぃぃっ!」
な〜んて、平和に会話を弾ませながら、部室に向かった僕らの前にその光景は現れた。 部室の扉に手を掛けようとした瞬間、部室の中から声が聞こえてきた。 それもすすり泣く様な…
「まもり姉…ちゃん?」 「シッ」
と、鈴音が扉を開けようとした僕の口に手を当てて突然後ろに引っ張るものだから、 グキッと鳴った首をさすりながら、鈴音に指示された場所に大人しく座り、 なぜか二人で聞き耳を立てる羽目になってしまった…
「ヒル魔くんひどい…あれほど一粒でもいいから食べてねって言ったのに… あんなに頑張って作ったのに…」 「……」 「なんでこれがまだロッカーの中にあるのよ!」 「……」 「いくら甘いものが嫌いだって、私一生懸命作ったのに…ひどいよ…」 「……」
どうやらまもりがヒル魔に対して何やら文句を言っているらしい。 甘いもの…一粒…手作り…から察するにチョコレートの話らしい。 しかし…
「おかしいなぁ〜確か、まもり姉ちゃんのチョコって市販のチョコだった気がするんだけど…」 「バカねぇ〜アンタのは市販でよくても妖兄のは市販じゃダメなのよ」 「え?何で…ヒル魔さんって市販のチョコ食べれないの?」 「…あ〜ホントバカ。もういいわ、ちょっと静かにして」
そう言うなり、鈴音は楽しそうに扉の隙間から室内を覗き込み、僕もしょうがなく覗く事にした。 中にはまもりとヒル魔の二人しか居ないらしい。 ヒル魔はまもりに背を向けたまま、無言でパソコンに向かっている。 まもりについてはたった今恐ろしい事に無言のヒル魔の背中に向かって、キレイにラッピングされた 箱を投げつけたところだったらしい…パコーンといい音でヒル魔に直撃したそれは 無残にもころころと床に転がった。 当事者でもないのに心臓がバクバク言うのはなんでだろう…
「……」 「……」
微妙な無言の間が続く。 最初に口を開いたのは…
「…あれ?」 「……ハァ…」 「なんで?」 「…それはこっちが聞きてぇよ、糞アマ」 「だって、これ渡した時のままじゃない…」 「どこがだ…お前のはラッピングなんてレベルじゃなかっただろ…」 「…そ、そりゃぁ〜こんなに上手だったかなぁ、とは思ったけど・・・でも普通ラッピングし直す?!」
まもりの言葉に悪魔はニヤリとしてやったりという笑みを浮かべる。 その笑みに何かを悟ったまもりは慌てて包みを開けると、その中には「ハズレ。」と書かれた紙が 一枚だけ入っていた。
「けーっけっけ。引っ掛かったな糞アマ」 「もぅ!!何よ…期待した私が馬鹿みたいじゃない!!そうよね、あなたがホワイトデーに 何かくれるかもって期待した私が馬鹿でしたっ!」 「…ハァ…ったく、てめぇはわかってねぇな。さっきのはハズレだったんだろ? だったらどっかに普通は『当たり。』があるんじゃねぇのか?」 「え…」
顔を紅く染めて、少し涙目になっていたまもりの唇に押し付けられた白い塊。 驚きに開いたまもりの口の中に押し込まれたそれはまったりと融けていく。 融け出した液体の中に甘酸っぱさが広がる。
「何これ、おいしい…」 「たりめーだ、不味くてたまるか。俺が選んでやったんだからな」 「ヒル魔くんが、私のために?」 「ほらよ」
あのヒル魔でも照れることがあるらしい…照れ隠しに2粒目をまもりの口に運ぶ。 今度は一思いにかじってみた。 上質のホワイトチョコレートとさっくりとした丸ごとの苺の甘酸っぱさが混ざり合って 丁度よい甘さが口の中いっぱいに広がり、まもりは幸せに頬を緩める。 なくなってしまうと、途端口が寂しくなり、次を促すようにヒル魔の首に撒きつく。 それをうっとおしがることなく、しょうがねぇな〜と笑みとも取れる嘆息をしながら、 まもりの唇に白い塊を押し付ける。
「ヒル魔くん、だ〜い好き」
「えぇ…っゔっ…」
まもりの重大発言に思わず声を上げてしまいそうになった僕を慌てて鈴音が押さえ込む。 危うく悪魔に殺されるところだった僕たちは二人して安堵の息を漏らす。 その間も変わらずラブラブは続いていて…
「ったく、よくもそんなにこんなもんが食えるもんだ」 「え〜だってこれおいしいんだもん。ヒル魔くんも食べたら?」 「…てめぇも言うようになったじゃねぇか」 「え…///ちがっ…そんな意味じゃ…」
そう言いつつも、二人の距離は近付いていって… って…
「えぇぇぇぇ!鈴音何するんだよ?!」 「これ以上はラブラブの邪魔できないでしょ?二人だけにしてあげましょ」
鈴音は急に立ち上がると僕の手を掴み足早で部室から離れていく。 いいところだったのにぃぃぃ・・・
その頃、部室のヒル魔たちといえば…
「ハイ」 「??何、その手」
目の前に差し出された手にまもりは不思議そうに自分の手を乗せる。
「締めて21000円也」 「何が?」 「お前が食べたチョコ代金、1個800円」 「えぇ?!そんなにするのあのチョコ?!っていうか、お返しでなんでお金取ろうとしてんのよ!!」 「あんなんで、こんな高級チョコが食えると思うのか?」 「あんなん…って、ひどすぎる…」 「払えないなら、もっと作ってもらわねぇとな」 「え?それって…///」 「とりあえず、今日のノルマだ」
そう言って、ヒル魔は事前に用意されていた袋をまもりに投げてよこした。 袋の中にはぎっしりいろいろな材料が詰まっていて。 中には全然チョコに関係ない材料まで…
「……もっと食べたかったなら、素直に言えばいいじゃない。 手料理食べたいなら、食べたいって言えないのかしらね。まったく…」
既に愛用のパソコンに向かってしまっている悪魔に向かってこぼす愚痴は幸せ一色に染まっていた。 今夜は珍しく真っ暗なヒル魔家から明るい声が聞こえそうである。
Happy White Day For You!!
世は正にWhiteDay! ということで一足先にフリー小説なぞ書いてみました… CPは一応ヒルまも/セナ鈴で… こんなもの貰って頂けるかどうかとても不安なのですが… もし良ければ貰ってやって頂けると非常に嬉しいです。 お持ち帰り方法→ ソース内の<ここから〜ここまで>というコメントの間をコピペして下さい。 フリー期間:2007年3月13日〜15日 報告などは別に必要ありません。 ここまでお読みいただいてありがとうございましたm(_ _"m)
By ARKY |