「まもり〜どこ行くの?」

「ん〜ちょっとねvv」

 

いつの間にか習慣になった屋上でご飯。

それもこれもある人物がここでいつもご飯を食べてるからなんだけど。

別に会話するでもなく、端と端で遠く離れて食べてはいるものの、

同じ空間にいるだけでなんとなく幸せだった。

でも、すぐにそんなことじゃ満足できなくなって…

 

 

 

 

//タコさんウィンナー//

 

 

 

 

「ねぇ、ヒル魔くん」

「あんだよ?」

「そっち行ってもいい?」

「あぁ?!」

「だって今日、こっち側日が射してないんだもん」

 

私の所定位置と自分の陣取っている場所を交互に見比べ、ヒル魔は小さく嘆息した。

 

「勝手にしろ」

「勝手にするわよ」

 

ウキウキと隣でお弁当を広げた。

ヒル魔を見遣ると相変わらず購買で買ったパンを口に運んでいる。

 

「いつもパンよね」

「なんだよ、欲しいのか?」

 

いつものからかうような意地悪な笑み…

それでもカッコよく見えちゃうんだよね…

 

「違うわよっ!…ただ、身体に悪いと思って」

 

 

 

 

 

 

 

今日は雨。

屋上には出れないけど、もしかしたら階段のところにいるかも…

いつものようにお弁当を持って屋上へ続く階段に辿り付くと、

案の定ヒル魔はそこでパンをかじっていた。

 

「なんだよ?今日は出れねぇぞ」

 

少し驚いた顔をしたヒル魔にクスリと笑って隣に腰を下ろす。

 

「私の目的は青空じゃないの」

 

訝しげに顔を歪めるヒル魔にお構い無しで、いつものように弁当を広げる。

と、おかずの中から真赤なタコさんウィンナーが消えた。

それは当然、ヒル魔の口に咥えられているわけで…

もしかして、好きだったりする?

なんか可愛い…

そうだ!今度ヒル魔くんの為にお弁当作ってこよう!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい天気〜」

「だな」

 

こんな普通の会話がなんだか嬉しい。

暖かい春の風が気持ちよくて、今のこの時間を余計に幸せに感じる。

 

「ハイ」

「?」

 

不思議そうなヒル魔に、お弁当よ、と無理矢理押し付ける。

 

「いつもパンじゃ、健康に悪いでしょ?」

「もらってもいいのか?」

「へっ?」

 

そんな言葉が返ってくるとは思わなくて、思わず変な声が出てしまう。

が、すぐにニッコリ微笑む。

 

「ヒル魔くんの為に作ってきたのよ?ね、開けてみて」

 

カパッ

 

仲良く寄り添った2つのタコさんウィンナー。

こんな風になれる日が来ますように…私の小さな願いを込めて…

 

「サンキュ」

「いいわよ、別に…ついでだし」

 

初めて言われたお礼にドクドクと脈打つ心臓を悟られないように、サラリと流す。

ヒル魔の箸がタコさんに伸びたが、一瞬考えるように箸を止めて隣のブロッコリーを挟んだ。

結局、最後の最後にタコさんは彼の口に運ばれた。

食べ終わると、いつものようにヒル魔は昼寝をする。

今日もそれは同じらしく、既に少しウトウトしていた。

今日は一緒に昼寝しようかなぁ〜なんて考えていた矢先、

目の前をまるでスローモーションのようにゆっくりと金色が通り過ぎ、フワリと膝の上に降り立った。

 

「えっ…ヒル魔くん?!」

「そういう意味じゃなかったのか?」

「?」

「タコ」


ヒル魔が何のことを言っているのか全然わからなかった。

頭の中で情報を整理しようと思っても、何も出てこない…

 

「えっと…」

「だから、こういう意味だろ?それとも無意識でやってんのかてめぇは?」

「何を…?」

「タコに名前書いてあったぞ?」

「えっ…うそ…///」

「うそ」

「…ヒル魔くんっ!」

「でも、そういう意味なんだろ?」

 

なんでもお見通し、みたいな表情でニヤリと笑う。

憎らしくてしょうがないこの顔が……好き。

 

「ヒル魔くんが好き」

「オレも」

「え///」

 

聞き返した時には既にヒル魔は目を閉じて眠ってしまった後で…

 

「起きたら、もう一回言ってよね…」

 

膝の上の思いの外柔らかい金髪を撫でながら、嬉しそうに微笑む。

 

「何回も言えるか、ボケ」

 

ヒル魔はこっそりと呟いた。