戯れ

 

「鋼の、ちょっとこっちへ来たまえ」

「何だよ?」

 

近寄って来た鋼の錬金術師の腕をグイッと引っ張り、自分の腕の中に収めた。

 

「なっ…///何しやがるっ!!!離せよ!」

「君という人間は…もう少し空気というものが読めないのかね?」

「は?!」

「まったく…これだから君はまだ子供だというんだ」

「オレは子供じゃ…」

 

言い返そうとした言葉は吐息と共にロイの唇に呑み込まれてしまった。

呼吸をしようと口を開ければするりと入り込んだ舌に全てをからめ取られてしまう…

逃げようと身を捻っても強い力で抱き締められて身動きが取れず、

かろうじて動かせる両手を合わせて刀を練成し、カチャリとロイの首筋に当てることで

漸く唇は離れた。

 

「やれやれ…本当に雰囲気の欠片もない…」

 

小さな子供は腕がゆるんだのを見計らってロイを強く蹴り飛ばす。

 

「何考えてんだよ、あんた!」

 

強く睨みつけるが、ロイはイタタ…と蹴られた部分をさすりながら立ち上がると

フン、と鼻で笑った。

 

「ちょっと可愛く見えたんだがね…気のせいだったようだ。…つまらんな」

「な…」

「もう帰りたまえ」

「何だよそれ!!ふざけんな!」

 

鋼の錬金術師が出て行った扉を見つめながら、ロイはホッと胸を撫で下ろした。

 

「危なかった…君が抵抗してくれなかったら危うく押し倒してしまうところだったよ…

どうやら私は相当重症なようだ…どうしてくれるんだい、鋼の?」

 

ロイは今にも飛び出して行きそうな胸の鼓動を抑えるようにギュッと胸元を握り締めた。