Revive零 帰還

 

「すみません、真東という先生がこちらに在籍していると聞いたんですが…」

「真東?…ああ、テル先生ですか?」

「そうです、真東輝」

「テル先生でしたら確かにいらっしゃいますが…何か?」

「そうですか…本当にお医者さんなんだ〜

「お呼びしましょうか?」

「あ、お願いします(^-^)」

「///」

 

 


 

 

 

 

プルルルル…

 

「はい、外科医局」

「北見先生ですか?テル先生にお客様なんですが」

「テルは今オペ中だ。医局へ通してくれ、俺が対応する」

「わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

コンコン。

 

「どうぞ」

「失礼します」

「……アナタは…」

「テルがいつもお世話になってます。テルの…」

「真東先輩!!」

「やぁ、ジュンジくん。お久しぶり」

「いつこっちに?」

「今朝着いたばかりだよ」

「そうか…テルには?」

「オペ中みたいで、まだ」

「院長!」

「ああ、そうだった。この人は真東光介、正真正銘テルの父親だ。

真東先輩、こいつはテルの指導医で…」

「院長、ちょっと待ってください!真東光介は死んだんじゃ…」

 

本人が目の前にいることを思い出し、北見は言葉を飲み込む。

その様子ににっこりと柔らかい笑みを浮かべると、光介はスッと手を差し伸べる。

 

「真東光介です。」

「北見…柊一です…」

「テルはいい指導医に恵まれたみたいだね」

「……」

「ホントこの病院はいい病院だよ、ジュンジくん」

 

伸びをしながら嬉しそうに話す光介の笑みはテルによく似ていた。

正確にはテルが光介によく似ているのだが。

そんな光介に対し、院長は嬉しそうに笑みを返す。

 

「でしょでしょ?先輩が入ってくれればもっといい病院になりますよ!」

「…僕が入ってもたいした役には立たないと思うけど…

昏睡してたぶん、腕は鈍ってるしね」

「先輩なら大丈夫ですって!それに先輩に俺の病院で働いてもらうのは

俺の夢なんですから!!」

「ちょっと待ってください…」

「なんだぁ〜難しい顔して」

「あの、真東…先生はここの病院で働かれるのですか?」

「……やっぱり僕、迷惑だったかな…」

「いえ、そういう意味では…ただ…」

 

ただ…なんなのだろう?

自分が何を言いたいのかわからないなんて…どうかしている。

フルフルと頭を振ると、北見はいつものポーカーフェイスに戻した。

改めて光介に手を差し伸ばし、ニコリと滅多にない笑みを作る。

 

「あなたのような医者が来てくれれば、助かる命も増えるでしょう。

何よりテル…息子さんも喜びます。

歓迎します。ヴァルハラへようこそ、真東先生」

「よろしく、北見先生」

 

複雑な思いを抱えた一人の男、それを敏感に感じ取りつつも

光介はテルによく似た柔らかな笑みとともにその男の手を握った。

 

………ただ…テルの指導医が自分ではなくなるのが嫌だと…

…テルが取られてしまう…

 

まるで恋敵が現れて嫉妬している恋人みたいだと北見は自嘲気味に笑うと

外科部長席に腰掛け、間もなく現れるであろう近付く足音の持ち主に思いを馳せていた。