「雨…」
鉛のような色をした空から透明な涙が降り注ぐ。
天空を見上げながらエドはボーっと降り出した雨に濡れていた。
着衣が水分を含みどんどん重くなる。
その重みはまるで自分に圧し掛かる重責の塊のようで、
ふっと身体の力が抜けてペタリと地面に倒れ伏そうとした瞬間…
キキッと音を立てて車が止まると同時にガチャッと扉が開き、
エドに向かってパシャパシャと水を撥ねる音が近付いて来た。
倒れる寸前のエドを抱きかかえたその男は顔に安堵の表情を浮かべつつも
相変わらずのバカにしたような口調で話しかける。
「何をしているのだね、鋼の」
「…離せ」
「おやおや、もう少しで泥ネズミになるところを助けてもらった人間の言葉じゃないな」
「別に…頼んでない」
フゥと呆れたように息を吐くと、軽々としたエドの身体を片腕に抱えて車に戻る。
「離せよっ!」
「このままでは風邪を引く」
「別にオレは…」
「キミに病気になられては困るのでね。大人しく上司の命令には従うものだよ、鋼の」
「オレはアンタ直属の部下じゃない!」
「だが、軍部では階級が最優先事項だという事を忘れたのかね?」
「クソッ…」
「シャワーを浴びてきたまえ」
「……」
エドは無言で差し出されたタオルを受け取ると、指差された方向に向かう。
初めて訪れた大佐の部屋はやはり上層部の人間らしく、バカみたいに広かった。
ただ、置いてある家具は非常にシンプルで、
殆どこの部屋にいることはないのだろう…余計なものは一切置いてなかった。
廊下の突き当たりを右に曲がると擦りガラスの扉が見えた。
開けると真白なバスルームが視界いっぱいに広がる。
雨に濡れた所為で脱ぎにくくなった服を脱ぎ、角に置いてある洗濯機に突っ込んだ。
何もかもが機能的に出来ているところは大佐らしい…が、
でも大佐が洗濯なんて想像できないな…ククッと笑うとシャワーの口を捻った。
勢い良く流れ出るシャワーに打たれながら、さっきの雨を思い出し
顔を上げるが、目の前には真白なタイルが見えるだけだった。
書斎の椅子に深く腰掛け、閉じた瞼の上に腕をのせる。
葛藤などあってないようなものだ…
元より抑える気などない…抑えなど効かない。
それはエドをこの部屋に連れて来た時点でわかっていたことだ。
浴室から聞こえる水の音が窓の外から聞こえる雨の音よりも耳に響く。
チッ…と舌打ちすると、ロイは静かに腰を上げた。
キィと小さな音を立てて擦りガラスの扉が開く。
別に音を立てないように気をつけなくてもいいのだが、
自然と息を殺し、静かにエドの元へ足を進める。
半透明のカーテンをゆっくり開けると、驚いたエドと目が合った。
「大佐…なんだよ、男のシャワーシーン覗く趣味でもあんの?」
訝しげに顔を歪めるエドの言葉など耳に入らなかった。
ただ値踏みするように頭のてっぺんから爪先までを舐めるように見下ろす。
発育不全の身体は紛れもなくその人物が子供である事を物語っている。
が、それが衝動を止める要因となることなどない…
解かれた髪をウザそうにかき上げる姿が妙に色っぽく見えて、中心が次第に容積を増す。
トン、とエドを挟み込むように壁に手を付き、驚くエドにそのまま口付ける。
エドはただ目を見開いていた。
「鋼の、私のものになれ」
「は…」
「キミに拒否権はない。ま、直に拒否しようとも思えなくなるだろうがな」
妖しげな笑みを浮かべてエドの腰を引き寄せる。
再び口付けようとして背けられた顔を空いている手で無理矢理自分の方に向け、
軽く口を開かせると、容赦なく舌をねじ込んだ。
逃げようとするエドの舌を執拗に追い回し、絡め取る。
唾液が溢れ出れば舌で舐め取る。
「やめ…なんで、こんな…」
その問いには答えない。
口付けで反応したのかエドの幼い性も徐々に起ち上がっていく。
軽く扱いてやると、苦しそうに身体を仰け反らせた。
ペロリと舌なめずりするとロイは躊躇いなくそれを口に含んだ。
「たい……さ…やぁっ…ん…あっ…」
亀頭まで付け根から丁寧に舐め上げる。
先っぽから溢れ出した雫をわざとピチャピチャと音を立てながら舐める。
羞恥に顔を歪めるその表情にすら、欲情した。
手で扱きながら亀頭の裏を舌でなぞってやる。
手と口で上下に抑揚をつけて揺さぶってやると、エドはアッと声を上げて達した。
「ハァハァ…もぅ、やめ…」
「自分だけ愉しんで終わりかい、鋼の?」
「愉しんでなんて……」
「ずっと我慢していたからね…今日は最後まで付き合ってもらうよ」
「最後までって…」
この後の行為を悟ったのか一瞬にしてエドの表情が強張る。
その表情に少し悲しげな笑みを浮かべるが、それも一瞬の事で、
ロイは勢い良くエドを浴槽内に引き倒す。
エドから溢れ出た白濁した液体が水と混ざって指に絡まる。
チッと舌打ちすると延々と流れていたシャワーを止めた。
一瞬にして周囲は静寂に包まれた。
エドの先端からは白と混ざり透明な液体が溢れている。
それを指で掬うと後ろの入口に宛がった。
一本、二本と指を侵入し、クチャクチャと音を立てながら出し入れする。
ある一点を突いた時、エドの身体がビクリと浮き上がった。
「アンッ…ハァ……」
「ここがいいのかい、鋼の?」
「ヤァッ…ンッ…アアン!!」
執拗にその一点を指の腹で撫で回したり、突いたりするたびに、
エドの口からは甘い嬌声が漏れた。
その声に溜まらず指を引き抜き、己を宛がう。
「クッ……狭いな…」
「イヤ…痛ッ」
イヤイヤと首を振るしか出来ないエドに優しく口付ける。
「力を抜くんだ。そうすれば楽になる」
生理的な涙をポロポロと零しながら、観念したようにエドはロイに身を任せた。
エドの力が抜けると同時に、既にカナリ解されていたそこはスルリとロイを飲み込んだ。
「入ったよ、鋼の。私が入っているのがわかるかい?」
「///」
「動くぞ」
「えっ……やぁんっ…」
静かな浴室にネチャネチャと卑猥な音が響く。
エドを抱き締めたまま激しく揺さぶるのは、身体がくっついていた方が気持ちいいから。
エドも初めて襲う快感に絶えるように一生懸命ロイに抱きついた。
「大佐…オレ、もう…ダメ…」
「私もだよ…鋼の…アッ…」
「で、結局なんでこんなことしたわけ?」
不機嫌そうな口調だが表情はそうでもない。
愛しそうにエドの髪を撫でると、普段は見せないような甘い笑みを浮かべる。
「そんなこともキミはわからないのかね、エドワード」
「///」
チュッと音を立ててキスしてやると、エドは恥ずかしそうに顔を染めながらボソリと呟いた。
「オレ、別にアンタとこういうことするのイヤじゃないかも…」
「ほぅ…ではもう一発…」
「え…おい、大佐……」
「キミが誘ったんだぞ、鋼の」
「うぅ…調子に乗るんじゃねぇ、無能大佐の癖に」
「む、こっちは無能ではないのだがね…」
「///バカ大佐…」
「なんとでも言いたまえ」
嬉しそうにロイはエドの首筋に顔を埋めて笑った。